2018年07月15日

toujyouka016.jpg 日本の性暴力被害者支援の問題

BBC2のドキュメンタリー「日本の秘められた恥」と、
その反響について取り上げた記事には、日本における
性暴力の被害者への対応の問題にも触れられています。

「「日本の秘められた恥」  伊藤詩織氏のドキュメンタリーをBBCが放送」
「BBC伊藤詩織氏告発番組が外国人女性に衝撃。」

性暴力の被害を受けたかたに対する、
日本の警察の対応の問題ついては、次の指摘があります。

 
番組はこのほか、警察の問題にも触れている。
日本の警察における女性警官の割合はわずか8%で、
伊藤氏が事件直後に被害届を出した際も男性警官に被害の詳細を
証言しなくてはならなかったこと、複数の男性警官の前で
警察署内の道場のマットに横になり、等身大の人形相手に
事件を再現させられたことなどが取り上げられた。

「男性警官が人形を私の上に乗せて上下に動かし、
こういう様子だったのかなどと確認された」と伊藤氏は話し、
番組は、警察のこの捜査手法をセカンドレイプだと
非難する声もあると指摘した。
また、被害者の傷口に塩を塗るような仕組みにも言及している。
「セカンドレイプ」という言葉は日本でもかなり認知されてきたが、
強姦被害者を助けるどころか、より追いつめるような
捜査やケアには問題があると言わざるを得ないと指摘している。

“(番組内で)伊藤氏は警察に行ったときに、
何が起きたかを詳細に伝える。加害者に見立てた等身大の人形を使い、
マットレスの上で事件時の状況を再現するよう言われ、
男性警察官からはなぜ女性警察官に話したいのか説明するよう求められた。
都内唯一の性暴力被害者の支援センターには、
電話での相談を受けつけてもらえず、
2時間かけて直接面談しに来るよう言われたという”

男性警察官を相手に被害状況を詳細に再現するというのは、
相当な心理・肉体的なダメージがあるだろう。

等身大の人形を使って、事件を再現させるなんて、
セカンドレイプになって当然だろうと思います。
被害者がPTSDになったら、警察や関係者は
どう責任を取っているのかと思います。
人形による再現なんて、なんのために必要なのかと思います。

女性警察官と話したいのはなぜか、
被害者に対して説明を求めるというのも不可解です。
性暴力の被害にあった人が女性であれば、
女性のほうが話しやすいのは当然だからです。

なにを当たり前のことを説明させるのかと思います。
またこんなわかりきったことをいちいち説明させられることが、
被害者にとって心理的負担にもなるわけです。


このような日本の警察の対応は、どんな性暴力の被害者に
対してもなされる一般的な取り扱いでしょう。
性暴力の被害を届け出たら、警察からこんな対処を
されるとあっては、被害届けを取り下げたくなる
被害者がいても、無理もないだろうと思います。

こうしたお話を他人から聞いて知っている人なら、
性暴力被害にあっても、警察へ届け出ることを
はじめから二の足を踏むだろうと思います。
こうして性暴力の被害が「なかった」ことになるという
「暗数化」が増えることになるのでしょう。


4月7日エントリでイギリスの性暴力被害者の支援が
充実していることについて、少しお話しました。
警察の対応もイギリスは日本とは対照的だと思います。
等身大の人形を使って被害の様子を再現させるなんて、
日本で一般的なことは決してなされないです。

「イギリスの性犯罪被害者支援」
「伊藤詩織さん「声」あげ感じた“海外”とのセクハラ意識の違い」

「私は、自分が性被害に遭って以来、
海外の性犯罪被害のサポート体制を取材し続けています。
特に、イギリスのサポートの厚さには驚かされることの連続でした。
現地の警察では、日本と違って、性犯罪専門の
トレーニングを受けた捜査員がいます。
しかも、ほとんど女性だから話しやすい。
人形を相手に、被害状況を再現させられるなどの、
セカンドレイプに当たるようなことは決して行われません。

イギリスでは、被害者が事件の状況を説明するのは最低限少なくし、
大体3回にするように努力しているそうです」
1度目は罪名を決めるために概要を、
2度目は捜査のためにビデオカメラの前で、そして3度目が法廷だ。

対応する警察官も性犯罪専門のトレーニングを受けています。
そしてほとんどが女性であり、被害者が少しでも
話しやすくなるよう配慮されています。
「なぜ女性の警察官と話したいのか?」なんて
愚問中の愚問を聞いてくる日本とは大違いです。

警察の対応がこのようであれば、いったん出した
被害届けを取り下げるとか、はなから警察に届け出ることに
二の足を踏むような性暴力の被害者は、
日本よりははるかに少ないことが考えられます。
かくしてイギリスは日本よりはずっと
性暴力被害の「暗数化」が少なくなるものと思います。


記事では日本の警察の女性警察官の割合は8%で
少ないことが指摘されています。
国際的に見てこの割合はどうなのかは、次のエントリで
UNODCのデータを示したことがあります。

「警察官の女性比率と強姦の認知件数」


この図は2012年のデータで日本は6%程度です。
その後女性警察官の割合に、若干の変動があったということでしょう。

図中に示されているヨーロッパの民主主義国は、
どこも日本より女性警察官の割合ははるかに多いです。
イギリスの女性警察官の割合は28%程度です。
その後の変動があって、もう少し増えている可能性もあります。

日本の警察では、性暴力の被害者に対してなぜ女性警察官と
話したいのか理由を言わせることを指摘しました。
女性警察官自体が少ないので、手配に手間取ることがある
(なので可能なら女性警察官を手配せずにすませたい)ことも
あるのではないかと、わたしは想像します。

posted by たんぽぽ at 23:23 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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