2018年07月17日

toujyouka016.jpg 日本の性暴力被害者支援の問題(2)

BBC2のドキュメンタリー「日本の秘められた恥」と、
その反響について取り上げた記事には、
日本における性暴力被害者の支援センターの
問題についても触れられています。

「「日本の秘められた恥」  伊藤詩織氏のドキュメンタリーをBBCが放送」
「BBC伊藤詩織氏告発番組が外国人女性に衝撃。」

日本の性暴力被害者の支援センターに関する
大きな問題は、数の圧倒的な少なさだと思います。
「都内唯一」とあるので、東京都には1箇所だけなのでしょう。

 
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44638987
伊藤氏は番組で、都内唯一の
性暴力被害者の支援センターを訪問した。
自分の被害直後に電話をしたが、直接来なければ
相談を受け付けられないと言われた場所だという。
番組によると、この被害者支援センターは
東京都の人口1300万人に対して担当者が2人体制と
人員不足が目立ち、暴行直後に法医学的証拠を
残すための「レイプキット」も提供できていない。

https://hbol.jp/170037
都内唯一の性暴力被害者の支援センターには、
電話での相談を受けつけてもらえず、
2時間かけて直接面談しに来るよう言われたという”

人口1300万人の東京都で1箇所だけ、担当者はふたり体制です。
東京都で発生する性暴力事件の件数を考えると
被害にあわれてもこの支援センターを利用するかたは、
ほとんどいないのではないかと思います。


詩織さんが支援センターに電話をしたところ、
直接来なければ相談を受けられないと
担当の人から言われたのでした。
この少ない人数による希薄なサポート体制では、
そうせざるをえないのもありそうです。

直接支援センターに来るように言われたことは、
2017年6月8日の毎日新聞の、詩織さんが最初に名前を
公表したときの記事でも少し触れています。

「詩織さん会見 名前と顔公表 反響は励まし、バッシング」

ベッドから起き上がれない状態で性暴力被害者支援の
NPOに電話すると「まずは面接を」と言われた。

詩織さんが山口敬之氏に連れ込まれたホテルは
東京都港区にあるので、そこから電車で2時間かかる
ところにある支援センターは、多摩西部のあまり
便利でない場所にあるのではないかと思います。

「【レイプ告白】「あの夜、なにがあったのか」詩織さんと山口氏 それぞれに聞いた」

ところが、山口氏が『何もしない。仕事の話をしよう』と言って、
港区内のホテルに向かうように指示したそうです。

性暴力被害の支援体制なんて「ない」も同然で、
性暴力の被害が日本ではいかになおざりにされてきたかを
あからさまに物語っているようです。


昨年2017年から政府は性暴力被害者支援の
充実に乗り出すことになりました。
これでもいままでよりは力を入れているのですが、
他国や国際基準から見ると、問題なく貧弱です。

政府は昨年、初となる性犯罪・性暴力被害者支援交付金を設置し、
今年度は1億8700万円を振り向けると発表した。
しかし番組によると、日本の半分の人口しかない英国では、
被害者基金の予算はその40倍だという。

日本政府は2020年までに各都道府県に
最低1カ所の支援センターを設置する方針だが、
20万人当たり1カ所という世界基準に沿うならば、
日本には635カ所必要になる。


2017年1月8日の日経新聞に少し出ています。
各都道府県に最低1箇所設置する支援センターとは、
「ワンストップ支援センター」のことです。

「性暴力被害、支援施設整備を後押し 国が交付金」

政府は、レイプなどの性暴力に遭った被害者が治療や相談を
一カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」を
全都道府県に整備するため、2017年度の予算案に
交付金1億6千万円を初めて計上した。
これまで資金難にあえいできた各地のセンター関係者は
「助かる」と歓迎しており、未開設の県の後押しにもなりそうだ。

2016年12月の時点で34都道府県に設置されているので、
設置していない県が13もあることになります。
「ワンストップ支援センター」の存在しない県が
これだけたくさんあることが、わたしには驚異的で脅威的です。

これを2020年までに、最低1都道府県に
1箇所以上とすることが、政府の目標です。
それでも20万人に1箇所という国際基準を満たすには、
日本は635箇所必要であり、政府の目標が達成されても
国際基準の10%にも満たないことになります。


この支援センター設置の目標達成のため、
2017年から性犯罪・性暴力被害者支援交付金を
政府は出すことになりました。
2017年度は1億6000万円で、2018年度は1億8700万円です。
これはイギリスの40分の1程度の予算規模です。

日経の記事を見ると「各地のセンター関係者は
「助かる」と歓迎しており」なんて書いていて、
いかにも充実した交付金が出されているかのようです。
これは支援センターの数が問題なく少ないので、
このくらいの少ない予算でも、じゅうぶん潤うのだろうと思います。

政府が性暴力被害者の支援団体のために
国家予算を投入したのは2017年が最初です。
それまでは支援団体の運営は寄付に頼っていました。
性暴力の被害者は、日本社会でいかにどうでもいい存在として
無視黙殺されてきたかを、示していると思います。

posted by たんぽぽ at 07:15 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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