2018年07月18日

toujyouka016.jpg 旧姓使用の状況に関する調査(2)

1月13日エントリで、内閣府・男女共同参画局による
「旧姓使用の状況に関する調査報告書」という、
旧姓使用の実態調査をご紹介しました。

「旧姓使用の状況に関する調査」
「旧姓使用の現状と課題に関する調査報告書」
「旧姓使用を認めている会社が半数以下 人事、給料の手続きが煩雑さが理由」

1月13日エントリで、企業で旧姓使用がどのくらい
認められているかを見てきました。
ほかにも調査項目やデータはたくさんあるので、
それらも見てみたいと思います。

 
今回は旧姓使用の範囲を見ていきたいと思います。
名前を使うさまざまな場面において、どれくらい旧姓を使えるかです。

「旧姓を使用している」
「旧姓を使用できず困っている」
「旧姓が使用できないが支障はない」の
3カテゴリにわけています。

「その他」は「仕事の上で日常使わない場合など」とあります。
旧姓使用は認められるが、自分は使っていない
といったケースも、含まれるかもしれないです。

旧姓使用の範囲 : 全体(n=3209)(1/2)

旧姓使用の範囲 : 全体(n=3209) (2/2)


「旧姓を使用している」がもっとも多い項目は、
「名札、社員証」「名刺」「社内名簿」「座席表」の4つです。
どの項目も70%以上あります。
「使用できず困っている」も、「社内名簿」だけ1.6%ですが、
それ以外の3項目は1%以下です。

これらはほかの書類(とくに公正証書)との連動もなく、
企業の公式文書ともほとんど関係なく、
問題は旧姓使用する本人の範囲にとどまるので、
認められる企業も多いということだと思います。

これら4つで旧姓使用ができたところで、
ネットで使うハンドルやニックネームのたぐいと
ほとんど同じレベルだと思います。
公式な場面ではまず使えないレベルです。
それゆえこれで「旧姓使用が認められている」と考えるかたは、
あまりいないのではないかと思います。


次に旧姓使用しているというかたの割合が高いのは、
タイムカードや出席簿、人事発令、社内の文書や出版物のたぐい、
社内の資格で、40%-60%程度となっています。
これらは企業の公式文書ですが、公正証書(戸籍簿、
住民票、登記簿など)との連動がないので、
わりあい認められるということだと思います。

「使用できなくて困っている」が2%以上ある項目は、
「人事発令」「社内システム」のふたつです。
人事発令なんて旧姓でもいいではないかと
思うところですが、ほかで旧姓を使っていても
こういうところでは「正しい名前」でなければならないと、
杓子定規なことを考えている人も結構多そうです。

社内システムは「電子的な決済、手続き等を
行うシステム」とかっこ書きがついています。
電子化している処理なので、戸籍名で登録してあると
融通がきかない、ということではないかと思います。


「給料や謝金などの支払い明細」は、
「旧姓を使用している」が33.5%にとどまります。
前述の会社の出版物のたぐいと比べると、ずっと少なくなります。
「使用できなくて困っている」も2.6%と多めです。

給与関係は税金の都合から公正証書
(戸籍簿、住民票、登記簿など)と連動させるし、
公正証書は戸籍名で登録されています。
それで旧姓を使うと名寄せが面倒になるので、
戸籍名を使わせる企業が多いのだと思います。

「通称使用の可能な範囲」

通称(旧姓)が使えない場面は?

支払い明細は会社が発行して本人にわたすものであり、
外部向けの文書ではないです。
それゆえ給与関係の部署で名寄せが容易であれば、
旧姓の明細書を発行することは、ほとんど問題がないです。
それゆえ銀行口座や国家資格よりは、
旧姓を使用するかたがずっと多いのだろうと思います。


「各種国家資格」で「旧姓を使用している」は20.5%、
「特許」は15.1%で、さらに少なくなっています。
これはその資格や特許が、登録する名前に
旧姓を使うことを認めているかどうかによります。

多くの資格や特許において戸籍姓での登録が要求され、
旧姓で登録できる資格はあまり多くないです。
それゆえ旧姓を使うかたは少ないことになります。

「旧姓の通称使用の状況」

国家資格と旧姓使用

「各種国家資格」の「使用できなくて困っている」は
3.8%とかなり多くなっています。
資格は業務を行なう上でつねづね提示する
必要があることが多いので、旧姓使用ができないと
不便が多くなるということでしょう。


「銀行口座」で「旧姓を使用している」は19.0%、
「クレジットカード」は16.0%となっています。
「困っている」はそれぞれ5.9%と5.0%です。
これら金融関係で旧姓を使う人は多くないし、
また使えなくて困っている人が多いということです。

金融関係で旧姓使用が認められにくいことや、
それで不便をきたしているかたが多いことは、
むかしからよく言われていることです。

詐欺などの不正を防止するために
戸籍姓以外の名前を使ってほしくないのでしょうが、
現実問題として旧姓を使うかたが多くなることで、
どれだけ不正が起きるだろうかと思います。

「戸籍の名前が正しい名前」という社会通念が、
必要以上に戸籍姓を信頼させていることもあると思います。
この問題に関しては旧姓を使うことに対して、
必要以上に神経をとがらせているようにも思います。

posted by たんぽぽ at 07:06 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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