「旧姓使用の状況に関する調査報告書」は、
あまりよそで見かけない調査内容もあります。
「旧姓使用の現状と課題に関する調査報告書」
「旧姓使用を認めている会社が半数以下 人事、給料の手続きが煩雑さが理由」
個人の旧姓使用の意識や動機についても
調査しているのですが、このうち旧姓使用する
理由やきっかけについてを見てみたいと思います。
いちばん多いのは「仕事関係者に同一人物と
認識してもらうため」で、72.5%あります。
4分の3ほどのかたはこの理由を挙げているということです。
仕事関係ですから、付き合う範囲も限られます。
名字が変わったことを知らせるじゅうぶんな
機会のない相手ももあるでしょう。
そんなかたに対しては、名字を変えないことが、
同一人物と認識させる、もっともよい方法になります。
「社内の人に改姓を伝えなくてよい」
「取引先、顧客などに人に改姓を伝えなくてよい」
「名刺、メールアドレスを変更しなくてよい」が、
それぞれ30%-40%程度となっています。
これらは「仕事関係者に同一人物と認識してもらうため」と
重なっているところもあると思います。
「仕事関係者」の区分を詳しくしたことになりそうです。
「プライベートを知られたくない」は19.2%です。
旧姓を使うのはおもに仕事関係でしょう。
仕事でかかわる相手に、結婚や離婚したことなんて
言いたくないかたは多いと思います。
そうでなくても仕事でかかわる相手に、
自分の結婚や離婚のお話をするのは非効率です。
相手は自分の結婚や離婚に興味がないことも多いでしょうし、
そのような相手であれば、結婚や離婚のお話を
聞かされることを、望まないと思います。
「周囲に旧姓使用している人がいる」は24.7%です。
すでに旧姓使用しているかたがいれば、
その職場は旧姓使用のためのシステムが
存在するということなのでそれを利用すればよく、
手間も心理的抵抗も少ないということです。
この設問は複数回答ができるので、
「周囲に旧姓使用している人がいる」の選択肢ひとつだけを
選んだかたは、おそらくほとんどいないと思います。
ほかに旧姓使用したい動機があって、
さらに周囲に旧姓使用しているかたがいることで、
旧姓使用しやすくなるということだと思います。
「旧姓で発表された業績がある」は5.0%です。
このような自分の名前が入った業績があるのは、
研究者とか職種がある程度かぎられると思われるので、
あまり多くならないのだろうと思います。
「その他」は次のようなものがあります。
5つのうち3つは、職場で旧姓使用が認められている、
旧姓を使うことが推奨される、旧姓を使うシステムが
整備されているといった、職場における旧姓使用の
環境に関することです。
旧姓使用を始めた理由・きっかけについて、
「その他」として、次のようなものが挙げられた。
新姓への変更に伴う社内システムの変更や手続きが煩雑である。
会社で最近、旧姓使用が認められるようになった。
会社が旧姓使用を勧めており、旧姓使用が会社の方針・社風である。
夫と同じ店舗で働いており、旧姓を使用する方が
お客様が区別しやすい。(理容師・美容師)
業界全体として、旧姓使用のための制度が整備されている(弁護士)
ほかに「新姓に変更する社内手続きが煩雑」があります。
改姓手続きが負担になるのは、身分証明書や
銀行口座、生命保険の名義など、個人で持っている
IDだけではないということです。
さらに夫婦で同じ職場なので、名字が違っていることで
お客さんが区別しやすいというものがあります。
職場内結婚をなさったかたの場合でも
結婚改姓しないほうが、ほかの社員、職員にとって
区別しやすいということも、あると思います。
ここで挙げられている旧姓使用をする理由やきっかけは、
職場の旧姓使用の環境に関するものを除けば、
どれも選択的夫婦別姓が認められて、
非改姓結婚できることで解決するものばかりだ、
ということを、言及しておくことにします。