2018年07月28日

toujyouka016.jpg もうひとつの夫婦別姓訴訟

かなり遅くなりましたが、もうひとつの夫婦別姓訴訟です。

5月10日に、夫婦同姓を定めた現在の民法の規定は、
「法の下の平等」を保障する憲法に違反するとして、
事実婚のかたたちが国や自治体に損害賠償を求めて提訴です。

「事実婚7人、夫婦別姓求め提訴「別姓が現実社会に拡大」」
(はてなブックマーク)

こちらが訴訟支援のサイトとツイッターです。

「別姓訴訟を支える会」(サイト)
「別姓訴訟を支える会」(ツイッター)

 


夫婦別姓を望む婚姻届の受理を拒まれた
東京都や広島県の事実婚の男女7人が10日、
夫婦同姓を定めた民法の規定は「法の下の平等」を
保障した憲法違反だとして、国や自治体に損害賠償などを求め、
東京地裁や同立川支部、広島地裁に提訴した。
同姓にしなければ法的に結婚できないのは不平等だと主張している。


訴訟の内容は支援のサイトに出ています。
First step > 第2次訴訟はどんな裁判で、どんな主張をしていますか?)

原告(申立人)は、市区町村役場に
夫婦別姓を希望する婚姻届を提出し、不受理となりました。
そこで、原告らは、
@家庭裁判所に夫婦別姓の婚姻届の受理を求める審判
A地方裁判所に婚姻届不受理処分・立法不作為に対する国家賠償請求
この2つを裁判で求めています。

また、@Aそれぞれの裁判の中で、別氏の選択肢を認めない
夫婦同氏制(民法750条及び戸籍法74条1項)は、
​(1)同姓を希望する者と別姓を希望する者の間に、
法律上の婚姻をできるか否かという異なる扱いをもたらしており、
「信条」による差別として憲法14条に違反する、

(2)憲法24条の「個人の尊厳と両性の本質的平等」の
要請に反しており、国会の立法裁量の範囲を超えている、

(3)国連自由権規約及び女性差別撤廃条約に違反する
との主張をしています。

民法750条をすべて違憲無効というのではなく、
別姓の選択を認めない点において違憲で条約違反との主張です。

現行民法では夫婦同姓は選択できるが、夫婦別姓は選択できないので
「法の下の平等」に反する、というのが主要なところです。
さらに憲法24条と日本が批准しているふたつの条約
(国連自由権規約、女性差別撤廃条約)が根拠で、
基本的に「正攻法」と言えると思います。


この訴訟の勝算ですが、例によって「高くない」と
わたしは悲観的な予想をしています。
ほかの夫婦別姓訴訟として、青野慶久氏らの訴訟や、
想田和弘氏らの訴訟などがありますが、
これらよりも勝算は低いのではないかと思います。

「夫婦別姓訴訟・青野慶久らが提訴」
「もうひとつの夫婦別姓訴訟」

今回の訴訟の内容は、2015年12月に大法廷回付され
原告が敗訴した夫婦別姓訴訟からは、さすがに変わっています。
それでも青野慶久氏らの訴訟や、想田和弘氏らの訴訟と比べると、
大法廷回付された訴訟に内容が近いです。

ほかの夫婦別姓訴訟でも、わたしは原告が勝訴する
可能性はあまり高くないと見てます。
2015年の夫婦別姓訴訟で最高裁判決が出てから、
それほど時間が経っていないですし、
ほかの夫婦別姓訴訟より2015年の訴訟に近い内容で、
勝算が高いとはあまり思えないということです。


原告団としては、2018年2月に発表された
内閣府の世論調査で、選択的夫婦別姓に賛成は42.5%で、
反対の29.3%を大きく上回ったことに、
新たな展望の可能性があると考えています。

「家族の法制に関する世論調査」

2015年の最高裁判決には
「夫婦が同じ名字を名乗ることは社会に定着している」
「今の制度は社会の受け止め方によるところが少なくない」
という主旨の判決文があります。
世論調査で賛成が増えたことで「社会の受け止めかた」は
変わったと考えているということだと思います。

夫婦同姓は民法750条で定められており、
最高裁も2015年、この規定を「合憲」と判断した。
しかし、内閣府が2月に発表した世論調査結果で、
選択的夫婦別姓制度に賛成する人の割合が4割を超えて過去最高を記録。
今回の原告らは改めて裁判で民法の規定について問いたいという。

わたしの想像ですが、青野慶久氏らの訴訟など
ほかの夫婦別姓訴訟の影響も考えているかもしれないです。
(青野慶久氏らの訴訟で違憲判決が出たのに、
自分たちの訴訟で違憲とならないのは
おかしいという判断がなされる、といったこと。)



付記1:

わたしはこの訴訟のニュースを見逃していました。
自分のブログで話題にするのがいまごろで、とても恐縮です。



付記2:

朝日新聞の記事を全文読むためには、
有料会員に登録する必要があります。
わたしは会員登録していないので読めないです。
ほかにも会員登録していないかたは多いと思うので、
無料公開の範囲だけでブログエントリを書きました。

紙面版を確認しましたが、有料会員の登録なしで
読める部分しか載っていなかったです。
紙面版には全文載せてほしいと思います。

posted by たんぽぽ at 22:56 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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