女子の受験者の得点を一律に減点して、女子の合格者数を
抑えていたことが発覚して、話題になっています。
「東京医大、女子受験生を一律減点…合格者数抑制」
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「女子減点「誰の利益にもならない」…波紋広がる」
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「東京医科大 女子の合格抑制 一律減点、男子に加点も」
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「東京医科大 女子受験者の点数を一律10%以上減点の年も」
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東京医科大(東京)が今年2月に行った
医学部医学科の一般入試で、女子受験者の得点を一律に減点し、
合格者数を抑えていたことが関係者の話でわかった。
女子だけに不利な操作は、受験者側に一切の
説明がないまま2011年頃から続いていた。
大学の一般入試で性別を対象とした恣意的な操作が
明らかになるのは極めて異例
関係者によると、同大医学部医学科の一般入試の
合格者数は10年に女子が全体の4割弱に達したため、
「女子は3割以内におさえるべきだ」として、
翌年以降、男子優遇の措置が取られてきたという。
具体的には、マークシート方式の1次試験で
女子の点を一律に減点したり、小論文と面接で実施される
2次試験で男子の小論文の点数を加点したりしていたという。
東京医科大で女子の点数を一律に減点する、
という操作をはじめたのは、2011年からです。
前年の2010年に女子の合格者が4割近くに達したことに
「危機感」を持ってのことでした。
東京医科大のジェンダー別の合格者数を見ると、
2010年に女子が男子を上回っています。
点数の操作がなければ、女子が男子より合格者が多い状況が
ずっと続いていたのではないかと思います。

東京医科大が点数操作によって、女子の合格者を
減らし続けてきた理由は、大きくふたつあるようです。
同大のOBは「入試の得点は女子の方が高い傾向があり、
点数順に合格させたら女子大になってしまう」とした上で
「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。
女性が働くインフラが十分ではない状況で、
仕方のない措置だった」と話した。
ひとつは点数順に合格させる「公平な」入試をすると、
合格者の大半が女子になるというものです。
女子の受験者のほうが、男子の受験者より
得点が高い傾向があるということです。
公平な競争によって女子が多くなるならそれでいい、
というより、そうあるべきだと思います。
男子の受験生に「げた」を履かせてまで、
男子学生を多くする必要はなんなのかと思います。
「女子の足を引っ張ってでも、男の優位を守る」という
差別的な理由しか考えられないです。
もうひとつは、医師の世界で女性が働く
インフラがふじゅうぶんで、医師になっても妊娠や出産で
離職する率が高い、というものです。
それゆえ女子の合格者を減らして、将来の女性医師を
減らすことで対応するということです。
妊娠や出産をしても仕事を続けられるインフラを
整備するのは、大学病院や医療機関の側の責任です。
女子の合格者が増えてきたと思ったら、
女性が働けるインフラ整備をするのが本来です。
そのインフラ整備をする責任をはたさずに、
女子の受験生に責任転嫁していることになります。
女性が働くインフラがふじゅうぶんで、
妊娠や出産で離職せざるをえない状況が続くというのは、
それ自体がジェンダー差別的な状況です。
その状況を改善できそうにないので、
女子の合格者を点数操作で減らすという、
ジェンダー差別的な対処しているということです。
ジェンダー差別を維持するために、さらにべつの
ジェンダー差別をする必要になった、ということです。
女子の受験者の得点を一律に減点することは、
入試の募集要項のどこにも書いていないし、
受験者に対していっさいの説明もないです。
ようは「うしろめたい」ということです。
入試の募集要項には男女の定員に関する記載はなく、
受験者側に一切、説明しないまま点数操作が続けられていたということです。
「選抜方法は募集要項に合理的な説明がなされれば、
受験生も納得できると思うが、募集要項に書いていないルールを
適用するというのはアウトだ」と話しています。
「合理的な説明がなされれば、受験生も納得できる」という
大学入試にくわしい識者からのコメントがあります。
「キャンパスが女子学生ばかりになる」も、
「女性医師が妊娠、出産後も働き続けるインフラが
整備できてない」も、女子だけ減点する点数操作に対して
「受験生も納得できる」「合理的な説明」ではないと、
東京医科大の関係者もわかっているのでしょう。
女子の得点を減点する割合は毎年変化しているようです。
おそらく男女の合格者の人数を見て、
毎年恣意的に決めているものと思います。
なぜこの年はこれだけ減点するのかという
明確な基準はおそらくないものと思います。
それで受験者に説明できないのもありそうです。
この東京医科大の女性受験者だけの一律減点は、
受験者やその関係者からは、非難轟々であることは
言うまでもないことです。
1点の差でしのぎを削る大学入試です。
そのために受験者は日夜努力を続けています。
医学部に入ろうというのであれば、将来は医師になる
こころざしを持っていることが多いでしょう。
こうした努力とこころざしを、こんな差別的なかたちで
踏みにじられるとあれば、とうてい容認できることではないです。
ところで、西川史子氏は
「当たり前です、こんなことは。(点数の)上からとっていったら、女性ばっかりになっちゃうんですよ」「(受験成績の)上から取っていったら、女性ばかりになっちゃう。女の子の方が優秀なんで、眼科医と皮膚科医だらけになっちゃう。重たい人の股関節脱臼を背負えるかっていったら、女性は無理なんです」
「外科医になってくれる男手が必要なんです。やっぱり、女性と男性の比率は考えないといけないんです。男性ができることと女性ができることは違う」
などと話しており、医師版杉田水脈か!と思いました。
百歩譲って、西川氏は私人なので杉田氏よりはましですが、
「眼科医と皮膚科医以外に、産婦人科医や内科医・小児科医などで女性医師の需要が多い」
「股関節脱臼を背負う男性看護師がいてもいいと思う」
「体力云々を言うなら、体力が大事なはずの看護師・介護士・保育士はなぜ女性が圧倒的多数なのか」
上記のように反論したくなりました。
(記事内にある、フリーアナウンサーの高橋真麻氏の意見は見事です)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000089-sph-ent
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000020-tospoweb-ent
片山氏はあまり好きではないですが、これには賛同しました。
各国の女性医師の割合(%)を見ると、OECD加盟国のうち女性医師の比率が20%未満なのは日本と韓国のみで、ほとんどの国で女性医師の比率は30%以上です。
(数年前のデータですが)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000069214.pdf
ちなみに「日本の女性は欧米の女性と比べて体力がないから、同じような社会進出は無理」という変な言説を
2015年頃からたまに見かけます。
なお、上記に反論する素材はたくさんあります。
・欧米でも男女の体力差はあるはずなのだが
(正確には主に筋力差。筋力では大体男性>女性だが、生命力では大体女性>男性)
・アメリカではアジア系の医師が比較的多い、当然アジア系女性医師も珍しくないはず
とあるツイートによれば、アメリカで人口に占めるアジア系の割合は6%に満たない、しかし医師に占めるアジア系の割合は25%前後
(そういえばフェイスブックCEOの妻も中国系医師である)
・同じ黄色人種の国(あるいは地域)の台湾では、女性医師の割合が2007の28%→2016年の34%に上昇したのだが?
(中国語なので私は読めませんが、ツイッターで少し訳してくれた方がいました)
http://m.ltn.com.tw/news/life/paper/999800
・昔の日本の女性(特に主婦)は、農作業や家庭内介護など、往々にして体力が必要なはずの役割を担ってきたのだが?
結局、女性が外に出て働くことが目障りなのか?
最後に、このようなデータを紹介します。
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/healthpolicyhealthecon.com/2016/12/19/physician-gender-and-patient-mortality/amp/%3Fusqp%3Dmq331AQGCAEoATgA
筋力的なことを考慮すれば、外科医は男性向きというのはあながち否定できないかもしれませんが、上記のデータと解説をを見ると、内科医は女性向きなのかもしれませんね。
(個人的には、女性の整形外科医がもっと増えてほしいです)
>https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000089-sph-ent
>https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180806-00000020-tospoweb-ent
記事のご紹介ありがとうございます。
やはりというか、東京医科大の点数操作を
せっせと擁護する人はいるのですね。
(ツイッターでも結構いるらしいです。
確認はしていないですが。)
西川史子氏のような女性医師が点数操作を
擁護するとなれば、ジェンダー差別を維持したい人にとっては、
なおさら好都合だろうと思います。
成績上位から取ったら女性ばかりになることを
「懸念すること」と考える人は多いけれど、
エントリでも書いたように公平な試験でそうなるのなら、
それでいいのではないかと思います。
成績上位から取って男性ばかりになるのは、
このような人はなにも言わないのでしょうし。
いくら合格者の大半を女子が占めるようになったとしても、
男子の合格者もある程度はいるでしょう。
百歩譲って外科医は男性でないと難しいとしても、
人材に困るほどではないのでは?と思いますよ。
>「眼科医と皮膚科医以外に、産婦人科医や
>内科医・小児科医などで女性医師の需要が多い」
>「股関節脱臼を背負う男性看護師がいてもいいと思う」
>「体力云々を言うなら、体力が大事なはずの
>看護師・介護士・保育士はなぜ女性が圧倒的多数なのか」
女性は眼科と皮膚科にばかりなる、というのも、
本当に業界の人?と思いたくなるくらい偏った認識ですね。
ご指摘のように女性医師の需要の多い科は、
ほかにもたくさんありますし。
体力が必要で女性が多数を占めている職業も
ほかにもいくつもありますし。
>(記事内にある、フリーアナウンサーの高橋真麻氏の意見は見事です)
たとえばこれとかですね。
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高橋はさらに「もしも、男子と女子の比率を考えて取りたいんだったら、
最初から男女の定員募集をそれぞれ別でやるべき。
学ぶ機会を意図的に奪うのはひどいなと思います」と語気を強めた。
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女子の受験者を減点して合格者を減らすことが
「当たり前」だというなら、入試の募集要項にも書いて
堂々と公表すればいいことだと思います。
エントリにも書いたけれど「受験生も納得できる」
「合理的な説明」があればいいわけですから。
なぜにだまってこっそり点数操作をするのかと思います。
「当たり前」ではなく「うしろめたい」と
思っているからではないのかと、わたしは思います。
片山さつきが珍しく(?)まともなことを言っていますね。
https://twitter.com/katayama_s/status/1026114399885438982
いつものようにデマを流してネトウヨに媚びても、
いいことないと思ったのでしょうか?
ジェンダー問題だから、差別や劣情に加担すると
自分にとって損になる、という判断かもしれないです。
>https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000069214.pdf
ご紹介ありがとうございます。
医師のジェンダー問題について、いろいろなデータが出ていますね。
内科にかぎりですが、同様のデータを見たことがあります。
「大学教員と内科医の女性の割合」
http://pissenlit16.seesaa.net/article/454825954.html
OECD加盟国でジェンダー関係の統計を取ると、
日本と韓国の2国が他国から孤立して立ち遅れているというのは、
「お決まり」のパターンとなっています。
>「日本の女性は欧米の女性と比べて体力がないから、
>同じような社会進出は無理」という変な言説を
差別したい人は、言うにこと欠いて
どんどん怪しげなことを言い出しますね。
「ジェンダー差別維持」という結論が先にあって、
その結論にあうように「理屈」を作るのでしょう。
>アメリカで人口に占めるアジア系の割合は6%に満たない、
>しかし医師に占めるアジア系の割合は25%前後
これは意外でした。
医師におけるアジア系の割合は、
全体の人口比より高いことはたしかそうですね。
>・同じ黄色人種の国(あるいは地域)の台湾では、
>女性医師の割合が2007の28%→2016年の34%
>http://m.ltn.com.tw/news/life/paper/999800
ご紹介ありがとうございます。
わたしも残念ながら、中国語は読めないです。
34%ならOECD加盟国と比べると高いほうではないですが、
加重平均に近く、日本や韓国よりはずっと高いですね。
(台湾は日本、韓国よりは女性医師の割合が
高いのではないかと思っていました。)
>昔の日本の女性(特に主婦)は、農作業や家庭内介護など、
>往々にして体力が必要なはずの役割を担ってきたのだが?
あなたの前のコメントにあった、
看護師、介護士、保育士など体力の必要な職種に女性が多い、
という指摘も反証になると思います。
>https://search.yahoo.co.jp/amp/s/healthpolicyhealthecon.com/2016/12/19/physician-gender-and-patient-mortality/amp/%3Fusqp%3Dmq331AQGCAEoATgA
こちらはご紹介ありがとうございます。
こんな研究があったのですね。
女性医師は男性医師より患者の死亡率が0.4%低い、
過去10年間の死亡率の改善ぶんくらいあるのですね。
このジェンダー差は結構大きいですね。
理由もじゅうぶん考えられることだと思います。
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過去の研究において、女性医師の方がガイドライン遵守率が高く、
患者とより良好なコミュニケーションを取り、
より専門家にコンサルテーションすることなどが報告されています。
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「男は女よりすぐれているから
男性優位社会は当然」と考えている人は、
こういう調査はどう考えるのかと思います。
こじつけてでも「反論」できるときは「反論」して、
「反論」も無理なら黙っているのだろうと思いますが。
本件に関与した東京医科大学の関係者たちは差別主義者、女性の敵と言われても仕方がないでしょう。
性別で加点するかどうかを決めるなんて女性蔑視の女性差別そのものです。
優秀で真面目に勉学に励んできた女子生徒、女子受験生たちを馬鹿にした暴挙です。
医師は力仕事が多いから男性のほうが向いているだなんて時代錯誤の屁理屈です。
こちらにコメントありがとうございます。
前に補助ブログにお越しくださったかたかな?
>本件に関与した東京医科大学の関係者たちは
>差別主義者、女性の敵と言われても
紛れもなくジェンダー差別ですね。
差別であることをごまかそうとする人たちもいるようですが、
はっきり言ったほうがいいと思います。
この件はとりわけ悪質だと思いますし、
手ぬるいこともしないほうがいいでしょう。
>医師は力仕事が多いから男性のほうが向いているだなんて時代錯誤の屁理屈です
上のコメントでも紹介されていますが、
OECD加盟国の大半は、女性医師の割合は
30%を超えていて、日本よりはるかに高いです。
50%を超えている国もたくさんあります。
https://flic.kr/p/29Xs71j
また女性医師のほうが男性医師よりも、
患者の死亡率や再入院率が低いという研究もあります。
「女性医師の方が、男性医師よりも患者の死亡率・再入院率が低いことが明らかに」
https://healthpolicyhealthecon.com/2016/12/19/physician-gender-and-patient-mortality/
「医師は男性のほうが向いている」と主張する人たちは、
これらの事実をどう考えるのかと思います。