2018年08月14日

toujyouka016.jpg 東京医科大・点数操作の差別性

東京医科大学の入学試験の点数操作で、
女子の合格者を減らしていたこと
について、
RIETIの客員研究員の山口一男氏が記事を書いています。
今回はこれを見てみたいと思います。

「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)

 
これくらいはっきり書いてほしいという内容です。
この件は、変に手ぬるいことをしたりせず、
はっきり批判する必要があることです。

https://www.rieti.go.jp/jp/special/special_report/098.html

山口先生、怒涛のマジレス。/教育受けるにも金かかってるし収入も悪くないんだからバイト労働でも復帰はするよね。保育士とかとは話が違う<平均就業率/奨学金でインセンティブつける、みたいなのは私も考えてたなぁ

2018/08/09 18:58


記事では、東京医科大学の点数操作による
女子の合格者の制限は憲法14条の法のもとの平等と、
教育基本法4条の「教育の機会均等」に反するとしています。

この種の女性差別が決してあってはならないことで、
憲法14条第1項で

すべて国民は、法の下に平等であって、
人種、信条、性別、社会的身分又は門地により
政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。
とし、またそれを受ける形で教育基本法4条において

(教育の機会均等)
すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を
与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、
経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

と記されていることに明確に違反する。

さらに医学部は、将来医師という特定の職業に
つくための職業訓練校的性格があることから、
東京医科大の点数操作は、男女雇用機会均等法や
男女共同参画社会基本法にも、違反することを指摘しています。

また医学部が他の学部に比べ医師という特定の職業に
結び付く職業訓練をかねた学部であることを考えると、
女性割合の制限は憲法や教育基本法だけでなく
雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法にも反すると考える。


これは東京医科大学が、点数操作によって女子の合格者数を
制限していることを、入試の募集要項に書かなかった
(書けなかった)理由にほかならないでしょう。

点数操作は、憲法やいくつもの法律に違反する
あきらかなジェンダー差別であり、「受験生が納得できる」
「合理的な理由」などどこにもない、ということです。
それゆえ募集要項に書くことができなくて、
「だまってこっそり」やるよりなかったということです。

だいたい「受験生が納得できる合理的な理由」があるなら、
最初から募集要項に書いていると思います。
募集要項に書かずこっそりやっていたことが、
「うしろめたい差別」だと東京医科大学の関係者も
わかっていたことを示していると思います。


一部では、点数操作について募集要項にはっきり
記載しないことが問題だ、という論調があります。

今回の東京医大のケースについて8月2日の朝日新聞記事は
文部省の担当者の談話として「入試の応募要項に
男女比の調整を明記していれば、大学の責任で実施できる。
東京医大がそうした説明をしないまま
調整していたなら問題だ」と述べたと報告している。

また、この「担当者」の言を裏打ちするかのように
林文部科学大臣も「募集要項にも示されずに、適切な目的なく、
不当に女子が差別されているような入学者選抜があるとすれば、
文部科学省としては認められない」と述べたという。

上記引用で触れられている8月2日の朝日新聞の記事には、
次のように文科省の担当者のコメントが載せられています。

「東京医大、女子受験者を一律減点 受験者側に説明なし」
(はてなブックマーク)
文科省の担当者は「入試の募集要項に男女比の調整を
明記していれば、大学の責任で実施できる。
東京医大がそうした説明をしないまま
調整をしていたなら問題だ」としている。

林芳正文部科学相のコメントは、8月3日のNHKで報道されています。

「東京医科大入試の女子減点 閣僚から批判相次ぐ」
これについて、林文部科学大臣は記者会見で
「募集要項にも示されずに、適切な目的なく、
不当に女子が差別されているような入学者選抜があるとすれば、
文部科学省としては認められない」と述べ、大学を批判しました。


ここで確認したいことは、

1. 募集要項にいくらはっきり記載しても
点数操作は「憲法や法律に違反するジェンダー差別」である

2. 点数操作が問題なのは「ジェンダー差別だから」であって、
「募集要項に記載しないから」ではない

ということです。


東京医科大の点数操作に対して、募集要項への記載を
問題にしている文科省の人たちは、「適切な目的」をもって
募集要項に記載するならよいと、言いたげでもあります。

点数操作によるジェンダー差別を正当化できるだけの
「適切な目的」があると、彼らは考えているのでしょうか?
もしそうならそれなんなのか、具体的に述べてほしいです。

「憲法や法律にも違反するジェンダー差別は、
募集要項に書いておもてで堂々とやればよい」などと
言いたいのでは、まさかないですよね?

もしそのような目的が「適切」とされるなら、
筆者には「女性差別は陰でこそこそやらず、表で堂々とやれ」と
差別を奨励することになると思える。


おそらく彼らも、点数操作を正当化できるだけの
「適切な目的」なんて、ありえないとわかっているのでしょう。
それゆえ具体的なことを言わず、抽象的なことを
言うだけにとどめているのだろうと思います。

「適切な目的」が存在しないなら、むやみに強調しないことです。
問題の本質が「ジェンダー差別」ではなく、
「募集要項への記載」であるかのような
印象を与える発言は、おおよそ好ましくないです。

posted by たんぽぽ at 06:19 | Comment(3) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
>点数操作によるジェンダー差別を正当化できるだけの
「適切な目的」があると、彼らは考えているのでしょうか?
もしそうならそれなんなのか、具体的に述べてほしいです。

>「憲法や法律にも違反するジェンダー差別は、
募集要項に書いておもてで堂々とやればよい」などと
言いたいのでは、まさかないですよね?

>もしそのような目的が「適切」とされるなら、
筆者には「女性差別は陰でこそこそやらず、表で堂々とやれ」と
差別を奨励することになると思える。



入試とは少しずれますが、過去には男女別定年年齢をめぐっての訴訟が複数ありました。

https://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20090828/103875/?ST=mobile_f

https://www.rosei.jp/lawdb/search/article.php?entry_no=31808

これらの判例を参考にすれば、募集段階でジェンダー差別を堂々とすることも認められないとは思うのですが。
定員が男女別に50:50ならまだ分かりますけど。
(話しやすさや羞恥心などの理由から、男性患者には男性医師、女性患者には女性医師が必要という場面があるでしょう。
実際、イスラム圏では、原則同性の診療しかできないという理由で、医師の男女比の偏りが少ない国もあるそうです)

個人的に思ったのは、林芳正文科大臣はまだましだったのかなと考えています。
もっと過激なタカ派的人物ならどうなっていたのかと思います。
(ちなみに、林大臣の妻は理工系の大学教員をしているそうです)

蛇足ですが、同じ「林」でも、今でしょ!の林修先生がどう思っているかが気になります。
(すでに何かコメントしているのであれば、是非教えてくださいませ)
あと、林修氏の妻は産婦人科医だそうです。
Posted by アイス at 2018年08月16日 23:13
アイスさま、こちらにもコメントありがとうございます。
わたしのお返事が遅くなってもうしわけないです。

>過去には男女別定年年齢をめぐっての訴訟が複数ありました。
>https://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20090828/103875/?ST=mobile_f
>https://www.rosei.jp/lawdb/search/article.php?entry_no=31808

ご紹介ありがとうございます。

女性の定年が55歳はともかく、30歳というのは衝撃的です。
「女は結婚したら仕事をやめる」というのが
それだけ当然視されていたということでしょう。


>募集段階でジェンダー差別を堂々とすることも認められないとは思うのですが。

当然認められないと思いますよ。

認められると思ったら、東京医科大は最初から
募集要項にはっきり書いていると思います。
認められないことだと思っているから、
だまってこっそりやっていたのでしょう。

コメントしている文部科学省の人たちも、
「適切な目的」なんて、ないとわかっていると思います。
あるならそれを堂々と主張して、
来年から募集要項に書くようにと言うと思います。


>定員が男女別に50:50ならまだ分かりますけど。

ジェンダー比の偏りを広げないための措置なら、
むしろ差別の是正であるとして、認められるのだと思います。

東京医科大がやってきたことは、
ジェンダー比の偏りを縮めないための措置なので、
差別的であるとして、批判されるということです。
Posted by たんぽぽ at 2018年08月20日 06:51
>実際、イスラム圏では、原則同性の診療しかできないという理由で、
>医師の男女比の偏りが少ない国もあるそうです)

男女がきっちり分けられているせいで、
女性のことは女性がやる必要があるので、
女性が知的職業についている割合が
意外と高かったりするのですよね。
ときどき指摘されることではあると思います。


>もっと過激なタカ派的人物ならどうなっていたのかと思います。

「女性医師が増えると医療が崩壊する」とか、
そこまで露骨でなくても「医師は力仕事のできる
男性を必要としている」とか「女性は妊娠や出産で
やめる人が多いからしかたない」とか、
そんなことを言うのではないかと思います。

どんなにジェンダー差別的で、東京医科大を擁護する人でも、
点数操作自体を「なかった」ことにする人はいないようです。
多くの論調は「男に下駄を履かせてよい理由」を、
あれやこれやと考えるものがほとんどのようです。

いままではまがりなりにも「男は女より優れているから、
男性優位社会は当然」と主張できたのでしょう。
今度はさすがにそれは主張できなくなったようです。
それで「無能な男に下駄を履かせてでも、
男性優位社会を維持するべきだ」という論調に
シフトさせていくもののようです。


>林修先生がどう思っているかが気になります。

残念ながら、わたしもコメントは見つけられないです。
おそらくなにも言っていないのではないかと思います。
Posted by たんぽぽ at 2018年08月20日 23:06