東京医科大が点数操作によって、女子の合格者数を
抑制したことについての、山口一男氏の記事です。
「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)
今回は諸外国の女性医師の割合について、見てみたいと思います。
女子の医学部受験者や合格者の数が問題になれば、
それは日本の女性医師の割合を問題にすることになります。
そうなれば当然ながら、外国では医師に占める
女性の割合はどれくらいなのか調べることで、
日本の現状を客観視する必要と関心が出てきます。
記事では2011年のOECD統計が出ています。
以下の記事に、より最近である2016年のOECDのデータを
見つけたので、こちらを見ることにしたいと思います。
「東京医科大の女性差別入試、
主要国最悪の女性差別オンパレードの日本vs男女平等が成長の原動力の北欧」
女性医師の割合は日本は21.0%で、調査対象国32カ国中最低です。
そのつぎに割合が低いのは韓国で22.7%です。
日本と韓国の女性医師の割合は同程度であり、
他国から飛び抜けて割合が低くなっているということです。
ジェンダー関係の統計を調べると、日本と韓国の2国は
似たり寄ったりの位置にあり、他国から飛び抜けて
低水準というのはよくあることです。
女子医師の割合もそうだったということです。
女性医師の割合が50%を超える国は10カ国です。
40%を超えている国は26カ国になります。
女性の割合が40%を超えたら、数の上では深刻な
ジェンダー差はないとすると、医師のジェンダー比に
関しては、OECDはほとんどジェンダー差別を
解消していると言っていいでしょう。
日本と韓国以外で女性医師の割合が40%未満の国は4カ国です。
(トルコ、アイスランド、アメリカ合衆国、ルクセンブルク)
これら4カ国はすべて30%を超えているので、
深刻なジェンダー格差はそう遠くない将来に
解消することが考えられます。
2011年のデータを見ると、日本と韓国以外で、
女性医師の割合が40%に満たない国は9カ国です。
このうちイタリア、カナダ、チリ、スイス、ベルギーの5カ国は、
2016年には女性医師が40%を超えています。
5年間のあいだにジェンダー格差を縮めたということです。
女性医師の割合のOECD平均は1990年は29%でした。
2015年には46%とほぼ半数になっています。
冷戦崩壊からの四半世紀で、OECDは医師の数においては、
ジェンダー差別をほとんど克服したと言えます。
「一番必要なのは「職場の理解」。東京医大・入試不正問題の背景にある6つのこと」
そうした中にあって、OECD加盟国でありながら、
ようやく女性医師の割合が2割を超えた程度の日本は、
ジェンダー差別を解消しないまま
すっかり取り残されていることになります。
2016年になっても、1990年のOECD平均を
超えていないところが、医師のジェンダー問題に対する
日本の不熱心さを示していると思います。
東京医科大の点数操作の件に関して、
「医師には力仕事のできる男手を必要としている」とか
「女性医師が増えたら医療が崩壊する」などと
言っている人たちは、このような世界の現状を
どのように考えるかと思います。
OECDはすでに、医師の数に関しては
深刻なジェンダー格差をなくしていると言えます。
そしてどこのOECD加盟国も、女性が多いせいで
医療が崩壊していることはないです。
女性医師の割合、OECD加盟国全35国の中で最下位って凄くない?
— ぽこ太郎 (@_spica_games_) 2018年8月8日
OECDだけあって普通に医療レベルの水準も高い国ばかりだし、
「女医を増やすと医療現場が崩壊する」って大嘘じゃないか。
よく考えたら力仕事の多い介護だって女性多いもんね。
医学部は性別地域年齢あらゆる差別やめましょう。時代錯誤。 pic.twitter.com/tyhxM8zb47
付記:
女性医師の割合がもっとも高いのはラトビアで74.2%ですが、
これはソビエト連邦時代に男性が長生きできず、
人口比で女性が多くなったかららしいです。
エストニアとリトアニアも女子医師の割合が
他国より飛び抜けて高く7割前後なので、納得はできそうです。
OECD加盟国の中で、女性医師の割合が多い国がラトビアで74.4%。日本のほぼ逆だ。ただし、ラトビアでは男女比率が女性100人に対し、男性84人と、世界で最も男性の割合が低いらしい。ちなみに、男性が少ない理由は旧ソ連時代の男性は長生きできなかったかららのようだ。
— Mimi Faty (@yutottomo) 2018年8月12日
ラトビアの全体の人口のジェンダー比が
女性100:男性84とすると、女性の割合は54.3%です。
全人口の女性の割合より、医師における女性の割合が
ずっと高いので、やはり男性が少ないこと以外の理由もあって、
女性医師は多いことになると思います。