2018年08月16日

toujyouka016.jpg 医師における女性の割合・国際比較

8月14日エントリの続き。

東京医科大が点数操作によって、女子の合格者数を
抑制したことについての、山口一男氏の記事です。

「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)

今回は諸外国の女性医師の割合について、見てみたいと思います。

 
女子の医学部受験者や合格者の数が問題になれば、
それは日本の女性医師の割合を問題にすることになります。
そうなれば当然ながら、外国では医師に占める
女性の割合はどれくらいなのか調べることで、
日本の現状を客観視する必要と関心が出てきます。

記事では2011年のOECD統計が出ています。

医師の女性割合( OECD統計、2011)


以下の記事に、より最近である2016年のOECDのデータを
見つけたので、こちらを見ることにしたいと思います。

「東京医科大の女性差別入試、
主要国最悪の女性差別オンパレードの日本vs男女平等が成長の原動力の北欧」


医師における女性の割合

女性医師の割合は日本は21.0%で、調査対象国32カ国中最低です。
そのつぎに割合が低いのは韓国で22.7%です。
日本と韓国の女性医師の割合は同程度であり、
他国から飛び抜けて割合が低くなっているということです。

ジェンダー関係の統計を調べると、日本と韓国の2国は
似たり寄ったりの位置にあり、他国から飛び抜けて
低水準というのはよくあることです。
女子医師の割合もそうだったということです。


女性医師の割合が50%を超える国は10カ国です。
40%を超えている国は26カ国になります。
女性の割合が40%を超えたら、数の上では深刻な
ジェンダー差はないとすると、医師のジェンダー比に
関しては、OECDはほとんどジェンダー差別を
解消していると言っていいでしょう。

日本と韓国以外で女性医師の割合が40%未満の国は4カ国です。
(トルコ、アイスランド、アメリカ合衆国、ルクセンブルク)
これら4カ国はすべて30%を超えているので、
深刻なジェンダー格差はそう遠くない将来に
解消することが考えられます。

2011年のデータを見ると、日本と韓国以外で、
女性医師の割合が40%に満たない国は9カ国です。
このうちイタリア、カナダ、チリ、スイス、ベルギーの5カ国は、
2016年には女性医師が40%を超えています。
5年間のあいだにジェンダー格差を縮めたということです。


女性医師の割合のOECD平均は1990年は29%でした。
2015年には46%とほぼ半数になっています。
冷戦崩壊からの四半世紀で、OECDは医師の数においては、
ジェンダー差別をほとんど克服したと言えます。

「一番必要なのは「職場の理解」。東京医大・入試不正問題の背景にある6つのこと」

世界における女性医師の割合の平均は25年間で約半数まで成長

そうした中にあって、OECD加盟国でありながら、
ようやく女性医師の割合が2割を超えた程度の日本は、
ジェンダー差別を解消しないまま
すっかり取り残されていることになります。

2016年になっても、1990年のOECD平均を
超えていないところが、医師のジェンダー問題に対する
日本の不熱心さを示していると思います。


東京医科大の点数操作の件に関して、
「医師には力仕事のできる男手を必要としている」とか
「女性医師が増えたら医療が崩壊する」などと
言っている人たちは、このような世界の現状を
どのように考えるかと思います。

OECDはすでに、医師の数に関しては
深刻なジェンダー格差をなくしていると言えます。
そしてどこのOECD加盟国も、女性が多いせいで
医療が崩壊していることはないです。



付記:

女性医師の割合がもっとも高いのはラトビアで74.2%ですが、
これはソビエト連邦時代に男性が長生きできず、
人口比で女性が多くなったかららしいです。
エストニアとリトアニアも女子医師の割合が
他国より飛び抜けて高く7割前後なので、納得はできそうです。


ラトビアの全体の人口のジェンダー比が
女性100:男性84とすると、女性の割合は54.3%です。
全人口の女性の割合より、医師における女性の割合が
ずっと高いので、やはり男性が少ないこと以外の理由もあって、
女性医師は多いことになると思います。

posted by たんぽぽ at 06:54 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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