記事ではさらに、医師国家試験の合格者のジェンダー比が、
どう変化しているかについて述べています。
「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)
ジェンダー比の年次推移が不自然なことから、
点数操作によって入学試験の女子の合格者を抑制しているのは、
東京医科大にかぎらないという可能性が考えられます。
関連の図が出ている錦光山雅子氏の記事はこちらです。
20世紀のあいだは、医師国家試験合格者のうち
女性の割合が、少しずつ高くなっています。
「東京医大以外でも「女子合格率、医学部だけ低いのは不自然」女性医師が指摘」
2000年に女性の割合がはじめて30%を超えます。
このころは、いずれ女性が4割を超え、医師の働きかたも
改善されるだろうと思われたのでした。
ところが2003年以降は、女性の合格者の割合が
横ばいとなり、31-34%程度でほぼ一定になっています。
これはとりもなおさず、2003年ごろから医学部に入学する
女子の割合が頭打ちとなったためと考えられます。
つまり東京医科大がしてきた点数操作と同じような
女子の入学者の抑制は、日本中の多くの大学の医学部で、
行なわれている可能性が高いということです。
東京医科大が点数操作を始めたのは2011年からと思われます。
2003年から点数操作が日本全国の医学部に
広がり出したとすると、東京医科大は点数操作を始めた
医学部としては、新参だったくらいになりそうです。
医師国家試験のジェンダー別の合格率の割合は、
以下の厚生労働省の資料にあります。
2005年から2010年までの、6年ぶんのデータだけですが、
すでに合格者のうちの女性の割合が横ばいに
なってからの時期なので、これでわかると思います。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000zqxg-att/2r9852000000zrf8.pdf
男性の合格率は80%台の後半、女性の合格率は90%台の前半で、
女性は男性より5ポイント程度合格率が高くなっています。
よって医師国家試験の女性の合格者の割合が
2003年以降ずっと伸び悩んでいるのは、
女性の合格率が低いからではないことがわかります。
これはとても衝撃的なことだと思います。
入学試験の女子の合格者を抑制していたことは、
日本中の多くの大学の医学部で横行していることであり、
東京医科大1校だけのことではないからです。
そしてこんな不正が15年もまかり通っていたということです。
医師国家試験の合格者のジェンダー比の年次推移は、
医学部の入学試験で、女子の合格者を抑制し続けてきたことを
しめす重要な証拠だったということです。
何人かの医療関係者が、女子の合格者の割合を
恣意的に抑制することは、ほかの大学の医学部でも
行なわれていると、コメントしていました。
医師国家試験の合格者のジェンダー比は、
これが事実である可能性を裏付けすることになります。
「東京医科大 女子受験者の点数を一律10%以上減点の年も」
東京医科大学が女子の合格者の数を抑えていたことについて、
複数の医療関係者は「合格者の男女の割合を調整することは、
ほかの一部の医科大学でも行われている」と証言しています。
「医学部の入試では大学側が恣意的に合格者を
属性でより分ける」といううわさがあるらしいです。
このうわさも本当ということになりそうです。
医学部入試では「大学側が恣意的に合格者を属性で選り分けてる」って「噂」はしばしばあるんだけど、まさか一律減点してるとは思わなかった。/東京医大、女子受験生を一律減点…合格者数抑制 : 読売新聞 https://t.co/PYAIALmIZw
— 烏蛇 (@crowserpent) 2018年8月2日
厚生労働省にしても、ほかの医療関係者のデータを
作成しているところ(テコムとか)にしても、
医師国家試験の合格者のジェンダー比の推移を見て、
なにかおかしいとは思わなかったのかと思います。
いままで一度も問題にしたことがないとしたら、
彼らは毎年のようにデータを扱っていながら、
15年間ずっとジェンダー差別にもとづく
深刻な不正があることに気づかなかったことになります。
それでも彼らを批判するのは酷ではあるのでしょう。
こういうのは、東京医科大で点数操作が発覚してから、
あらためてデータを見て気がつくことであり、
「後知恵」でわかることなのだろうと思います。
こうなると統計で不自然な変動があるたびに、
じつはそこに深刻な不正や差別があるのではないかと、
いちいち疑ってかかる必要がありそうです。
こうして世の中は疑心暗鬼に満ちていくのでしょう。