2018年09月02日

mar0006.gif女性医師は育児による離職が多い?

8月14日8月16日8月20日8月25日エントリの続き。

東京医科大の点数操作についての山口一男氏の記事です。
今回は「女性は出産や育児で離職するから、
女性医師の割合が低い」という、よく言われることが
どこまで妥当かということについてです。

「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)

 
よく言われることだが、女性にチャンスは同等に与えているのだが
女性が育児などで離職してしまうから医師の間での
女性割合が少ないという説は妥当だろうか。


これは東京医科大学も点数操作によって女子受験者の
合格者を抑制することの口実にしていました。
いかにも改善がきわめて困難で避けがたいと言いたげですが、
出産や育児による離職は、ジェンダーに因習・反動的な人が、
ジェンダー差別を正当化する格好の口実だと思います。

「東京医科大・女子受験者から一律減点」

同大のOBは「入試の得点は女子の方が高い傾向があり、
点数順に合格させたら女子大になってしまう」とした上で
「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。
女性が働くインフラが十分ではない状況で、仕方のない措置だった」と話した。


はじめに出産や育児による女性医師の離職は、
ほかの業種とくらべて本当に多いのかを見てみます。

ジェンダー別の医師の就業率の年齢推移は次のようです。
(内閣府男女共同参画局『共同参画』の2012年2月号の図3)
もっともジェンダー差の大きい年齢は35歳で、
男性は91%程度、女性は76%で15ポイントの差があります。

男女別の医師の就業率

25歳から60歳までの全体を平均すると、
男性は90.9%、女性は83.9%で7ポイントの差になります。
この7ポイントは大きいか小さいかという問題があります。


2013年の全体のジェンダー別労働力率の、
年齢推移は次のようになっています。
女性の平均は70%ほど、男性の平均は90%以上あります。
20-25ポイント程度の差ということになります。

年齢階級別労働力率の就業形態別内訳(男女別、平成25年)

医師の就労率のジェンダー差の7ポイントは、
全体の平均労働力率のジェンダー差から考えると、
3分の1もないことになり、小さいと言えると思います。

つまりほかの業種とくらべると、医師は出産や育児で
離職する女性がずっと少ないということです。
資格を必要とし、高度な専門知識を有する業種なので、
他業種よりは復職の機会があるということだと思います。
労働環境の改善や職場の意識の変革で、
じゅうぶん解消できる程度であると言えそうです。

25歳から60歳までの(年齢分布を一様と考えた)平均では
男性の平均就業率は90.9%、女性の平均就業率は83.9%で、
わずか7%の違いにすぎない。

だが7%という就業率の男女差はこの点で社会のあり方が
改善されれば十分解消できる度合いであり、
それを理由にして差別を行うなど、法的かつ倫理的に
否定されるべきであるばかりか、合理的判断では全くない。


女性医師が休職や離職をした理由として
もっとも多いのは「出産・子育て」で83.7%です。
(日本医師会男女共同参画委員会「平成29年女性医師の
勤務環境の現状に関する調査報告書」より)

「一番必要なのは「職場の理解」。東京医大・入試不正問題の背景にある6つのこと」

女性医師の休職理由で圧倒的に多いのが「出産・育児」

6人中5人が挙げていて、休職や離職をする理由は
ほとんど出産や子育てばっかりという状況です。
「女性医師が休職や離職する理由」として
「出産や育児が多い」ことは、事実ということです。

前述のジェンダー別の医師の就業率の年齢推移を見ると、
35歳のところで、女性の就業率がくぼんでいます。
これはまさに出産や育児のために就業率が下がる
「M字カーブ」を描いているということです。

女性の労働力率の年齢推移がM字カーブを描くのは、
日本と韓国でのみ現れる現象です。
この特異現象は日本では医師にかぎっても生じるという
はなはだ残念なことになっているわけです。


出産や子育てによる女性医師の休職や離職を減らすには、
職場の理解の浸透であり、子育てしながら仕事を続ける
職場環境の整備であることは、もちろんです。

子育てと仕事を両立するために必要とされているのは「職場の理解」

子育てをしながら働きやすい職場環境づくりはまだ道半ば

この点に関して、女性は男性と同じ機会を
与えられていないのであり、「女性にチャンスは同等に与えている」
というジェンダーに因習・反動的な人が考えることは、
まったく当たっていないことになります。

posted by たんぽぽ at 20:58 | Comment(2) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
>25歳から60歳までの全体を平均すると、
男性は90.9%、女性は83.9%で7ポイントの差になります。
この7ポイントは大きいか小さいかという問題があります

ところで、男女別の医師の就業率のグラフをよく見ると、75歳では、むしろ男性医師より女性医師の就業率の方が10ポイント程高いですね。
(このことを指摘する意見はあまりなかったですが)

75歳だと、男性医師の方が女性医師より病気にかかっている率が高く、相対的に女性医師の就業率が高くなるのでしょうか?
平均寿命も女性の方が長いですし。
Posted by アイス at 2018年09月04日 00:58
アイスさま、コメントありがとうございます。

>75歳だと、男性医師の方が女性医師より病気にかかっている率が高く、
>相対的に女性医師の就業率が高くなるのでしょうか?
>平均寿命も女性の方が長いですし

70代になると健康上の理由で引退する人が、
女性より男性のほうが多い、ということだと思います。
ご指摘のように女性のほうが長生きするのもあるのでしょう。

指摘がないのは、ここでの議論には、
あまり関係ないからだと思います。
職場環境に関するジェンダー差別ではないですしね。
Posted by たんぽぽ at 2018年09月04日 06:35
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