2018年10月28日

mar0006.gifむかしは計画的に家族を作った?

かなりむかしの記事ですが、2010年8月25日の
『マガジン9』で、貧困問題について取り上げていました。

「「どっちが深刻? 世界の貧困、日本の貧困 『犠牲の累進性』を超えて」の巻」

記事の最初のほうで、NHKの『日曜討論』に出演した
西部邁氏が、すさまじいことを言ったことに触れています。

 
私自身は、家族が最初で最後のセーフティネットになっていて、
結局問題が家族に丸投げされていること
(機能している家族だったらいいが、貧困などによって
機能していなければ様々な問題が起こるはず)や、
シングルマザーの実態などについて、話をさせて頂いた。
他の出演者は吉岡忍氏や西部邁氏など。
で、ショックを受けたのは、児童虐待の話の時、
西部氏の口から発された「産み散らかして」という言葉だ。
何か、すごい言葉じゃないだろうか・・・。

シングルマザーのことを指していると思いますが、
西部邁氏は「産み散らかして」などと言ったというのですよ。
この無理解と差別性については言うまでもないと思います。

この発言も問題にしたいところですが、
ここでは西部邁氏が「計画的に子どもを産むべきだ」と
言ったことについて、少し考えてみたいと思います。

とうぜんながら、西部邁氏の世代やその上の世代は
計画的に子どもを作っていたのか?という疑問がわきます。

あと、西部氏は将来の計画を立てて子どもを産むべきだ、
というようなことも言っていたのだが、
自分の親世代やその上の世代などが、それほど将来設計を
明確にしていたのかと考えるとどうも怪しい気がする。


太平洋戦争中、日本は労働力と兵力の確保のために
富国強兵策を進める「戦時人口政策」を行ないました。
そのために、国民の平均婚姻年齢を3年早くして、
1夫婦あたり平均4人だった子どもの数を、
5人にすることを閣議決定までしています。

「大政翼賛会の母性の保護」

「戦時人口政策」における具体的な政策のひとつに、
女性のマインドコントロールがありました。
「女のしあわせは結婚をして子どもを産むことだ」
という考えを、全国のさまざまな女子教育の場で
女性たちに教え込むというものです。

「戦時人口政策」は大きな成果をあげました。
それまで190万人台に落ち込んでいた日本の出生数は、
1940年代に入って毎年200万人を超えました。
その余波は敗戦直後の団塊の世代を産み出した
ベビーブームを起こしたのでした。


敗戦後は、企業の利益のために従業員の生産性を高める
という観点から「標準家族」という概念を浸透させました。
具体的には「夫が働き妻が専業主婦で子どもは
ふたりくらいがちょうどいい」というものです。

専業主婦の妻に家のことを任せきりにできれば、
男性は会社での仕事に専念できるし、
また子だくさんにせず、子どもはふたりにしておけば、
家が静かになるので、父親が家に帰ってきたとき
仕事の疲れを取れると考えたからです。

「子どもがふたりなら静か」なんて根拠のないことですが、
次のような漫画などで、国民は吹き込まれました。
かくして高度経済成長期には「標準家族」の
「すばらしさ」が国民のあいだで広く信じられ、
出生率は急速に2に近くなっていきました。

図表1-1 日本鋼管が1953年頃、全社員の月給袋に入れて配った漫画(朝日新聞1995年3月2日付より)

「合計特殊出生率の推移(日本及び諸外国)」

合計特殊出生率の推移(日本及び諸外国)


戦中の「戦時人口政策」も戦後の「標準家族」も、
どちらも国策で決めた「あるべき家族」であり、
多くの国民がその国策に従って家族を作ったということです。

それは「計画的に子どもを作る」という主体性とは
まったく対称的な、国が決めた線路の上を走るだけの、
「主体性のない家族計画」ということになります。

当時の国民は、国が決めた「あるべき家族」を持つことが、
自分たちの幸せだと、マインドコントロールもされています。
それで自分たちは計画的、主体的に家族を作ったと錯覚して、
実は国が決めたことに従っているだけ、
ということに気がつかないのだろうと思います。

時代の後押しというか、前提が今とは違いすぎる。
しかし、なんとかなった人はその当時のことなど忘れ、
「自分は綿密な将来設計を立てていたからなんとかなったのだ」
などと大嘘をついたりするのでやっかいだ。

太平洋戦争中は「お国のため」になることをするのは
ステータスが高く、充実感もあったでしょう。
高度経済成長期は、現実に経済が復興して暮らしが
豊かになっていくので、幸せを実感できたでしょう。
それゆえどちらの時代も、なおさら国民はマインドコントロール
されやすかったものと思います。



付記:

西部邁氏は選択的夫婦別姓問題に関しても、
「さなぎから蝶に変態するように、女は結婚改姓を望む」
という主旨のことを言う、ジェンダー差別的な人です。
それを考えれば、ひとり親家庭に対して
これくらいのことを言っても、意外性はないでしょう。

「評論家の西部邁死去・入水自殺?」
「恐妻家の反対論?」

西部邁氏に関しては、選択的夫婦別姓に関する見解以外
わたしはぜんぜん知らなかったのでした。
ほかのことで西部邁氏がなにを言っているか、
はじめて拝見することができました。


謝辞:

10月19日エントリのコメント欄で、『マガジン9』の記事を
教えてくださったアイスさま、ありがとうございます。
(教えてくださったのは、西部邁氏の発言のためではないですが。)

posted by たんぽぽ at 09:28 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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