西部邁氏は「計画的に子どもを作るべきだ」と言うので
それなら西部邁氏の世代やその上の世代は、子どもを計画的に
作っていたのか?ということを考えていきます。
「「どっちが深刻? 世界の貧困、日本の貧困 『犠牲の累進性』を超えて」の巻」
『マガジン9』の記事で雨宮処凛氏は、西部邁氏の世代は、
高度経済成長の時代だったから、「標準世帯」でもなんとかなった
部分が大きいのだろうと考えています。
たまたま経済成長時代で、夫が正社員で妻が専業主婦で、ってな
「モデル家族」を基準とした社会だったからこそ
なんとかなった部分が非常に大きい気がするからだ。
実際、経済が上向きだったので妻が専業主婦で
男性の片働きでも、家計を支えることができました。
またふつうの暮らしぶりの男性でも、親世代より豊かな生活が
保障できるので、女性は結婚して専業主婦になっても、
結婚前より生活がよくなりました。
「非婚・未婚と経済問題」
「未婚率が低かった時代」
さらに企業の多くは、社員の配偶者や子どもにも
手当てを支給するという、独特の賃金体系を導入します。
高度経済成長期の「標準家族」は、口先だけの
「家族かくあるべき」ではなく、実現するための
経済インフラが整っていたのでした。
終戦直後の1946年、電力会社と労働組合との間で
後に電産型賃金と呼ばれるようになる
画期的な賃金体系の導入が合意された。
この賃金体系には、家族が暮らしていくための
必要最低限の給与を保障するという目的で、
会社で働いていない配偶者や子供にも手当て支払うという、
世界でも類いまれな家族手当の考え方が含まれていた。
『<非婚>のすすめ』(森永卓郎、講談社現代新書、p27-p28)
西部邁氏の世代は、国策で決めてもらった
「あるべき家族」をそれに疑問を持たずに作っても、
経済的に困ることはなかったということです。
それは取り立てて計画性のない人でも実行できることです。
社会が支えてくれたからお金に困らなかった
というだけなのに、あたかも自分の世代は計画的に
家族を作ったからお金に困らなかったのだと、
錯覚をしているのかもしれないです。
現在「夫が働き妻が専業主婦で子どもがふたり」という
高度経済成長期の「標準家族」を作ろうとすると、
30代で年収が650万円程度必要になります。
「子どもふたりの適正年収」
30代男性の平均年収は427万円ですから、
ふつうの暮らしぶりではかなり難しいことになります。
高度経済成長期に導入された、配偶者や子どもがいる社員に
対する家族手当ては、現在でも多くの企業にあります。
それでこの状況ということです。
計画的に家族を作ろうとしても「標準家族」を
持つことなど、社会が支えられなくなっていて、
ほとんどの人にとって困難な水準ということです。
高度経済成長期と同じ感覚で、疑問を持たずに
国が決めた「あるべき家族」を作ろうとすれば、
その家庭は経済的に破綻するでしょう。