2018年11月18日

toujyouka016.jpg 医学部入試点数操作・今後の対応

9月26日エントリの続き。

東京医科大の点数操作についての山口一男氏の記事です。
今回は副題にもあるように、記事の最後で触れられている
「今後政府はなにをするべきか」を見ていきます。

「東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか」
(はてなブックマーク)

 
加藤厚生労働大臣も、日本医師会も、東京医大の件に付き
「あってはならないこと」などの見解を発表した。当然であろう。
だがまず政府は東京医大以外にも、類似の女性差別を入学に関し
行っている医大・医学部の有無について調査すべきであり、
また類似のケースがあれば東京医大ともども適正に処罰するとともに、
今後このようなことが一切起こらないようにするために、
何を行うかの指針を明示すべきである。

事実の明確な差別と関連する法令違反に対し罪に問い
罰則を課すことをせずに政府が単に言葉だけで否定し
今後の改善を語るならば、それは法治国家のあるべき姿ではない。

またこれまでに差別により被害を被ったと考えられる
女性受験者たちにも過去にさかのぼって適正な賠償がなされるべきであるが、
被害者を特定し救済するにも政府の介入・支援が必要だ。


ここでなすべきは、
1. 実態の調査
2. 違反していた大学の処罰
3. 再発を防ぐための措置
4. 被害者の救済
になると思います。

1.に関しては、現在のところ政府レベルで
対応が進められていると言えます。
文部科学省が第三者委員会を設置して、東京医科大学と
同じような入学試験における不正をしている
大学医学部がほかにないか、調査をしています。

「ほかの医学部でも入試で男女差」

文部科学省、および文部科学大臣は、
入学試験で不正があった大学医学部を把握していて、
大学からの自主的な発表がなければ、
文部科学省から公表をするとしています。

東京医科大の不正入試問題を受け、文部科学省が
全国81大学の医学部医学科を対象に実施している調査で、
他の大学でも不適切な入試が疑われるケースが
あったことが、関係者への取材でわかった。
文科省は引き続き大学側に説明や資料提出を求めており、
月内に最終結果を公表する方針だ。


1.は2.-4.と違って、政府には直接的な責任はなく、
大学医学部を追求する立場にあります。
また法律や制度を定める必要もないし、
補償金のような財政的な負担も必要としないです。
立場的にやりやすく、負担がかからないので、
政府が積極的に作業が進めているのもあるのでしょう。

ほかにも入学試験で不正な操作をしている
大学医学部があることはうわさされていました。
また医師国家試験の合格者のジェンダー比という、
不正操作されている状況証拠もあったのでした。
政府が本格的な調査に積極的になったのは、
「いまさらごまかせない」こともありそうです。

「医師国家試験合格者のジェンダー比」

医師国家試験合格者の男女比


2.と3.はいまのところ手がつけられていないです。
1.の実態調査が終わらないと入れない作業ですから、
まだこれからということになるのでしょう。

3.の再発防止に関しては、新しく法律を定めて、
入学試験の不正な操作を禁止する必要があるでしょう。
2.の違反した大学医学部に対する処罰も、場合によっては
新たな立法が必要になることが考えられます。

法律を定めて処罰や規制をするということは、
社会がジェンダー差別をなくそうとすることであり、
社会全体の問題になることを意味すると言えます。


こうなるとジェンダー差別主義者たちが、
反発する可能性が出てくることになります。
彼らはそもそもジェンダー差別を温存したがっているし、
社会がジェンダー差別をなくそうと立法に動くことは、
自分たちの責任が問われていると考えるからです。

自民党にはジェンダー平等に反対する議員が多いです。
たとえば国会議員の候補者を男女同数にする
「政治分野における男女共同参画推進法案」に
猛烈に反発して、法案成立に反対し続けています。

「政治男女均等法案・自民反発」

ジェンダー差別的な政党がとっている政権であれば、
ジェンダー差別を防止する法律を作ることに
消極的になる可能性はじゅうぶん考えられます。


4.については、最初に不正が発覚した
東京医科大学は被害の詳細がわかりはじめています。

「東京医科大・点数操作の調査」

東京医科大は23日、同大の不正入試について
調査をしている第三者委員会(委員長=那須弘平・
元最高裁判事)の1次報告書を公表した。
それによると、女子受験生に対する不利な得点操作などをした結果、
2017年度と18年度の一般入試では、
本来合格していた計55人の女子が不合格にされていた。
報告書は同大が追加合格の判定を行ったうえで
結果を公表し、新たに合格者となった受験生には
補償などの対応をするよう求めている。

不正がなかった場合の成績を再現した結果、
女子の合格者は17年度は99人から110人に、
18年度は69人から113人に増えたと指摘した。

もと受験生たちが弁護団を通じて、集団請求を起こしています。

「東京医科大・もと受験生が集団請求」

東京医科大が女性と多浪の受験生の得点を
不正に操作し、合格者数を抑えていた問題で、
「医学部入試における女性差別対策弁護団」は
10月24日、東京・霞が関の文部科学省内で会見を開いた。
まず元受験生約20人を代理し、成績開示や
受験料返還、慰謝料を求める「第1次集団請求」を
10月29日に東京医大に対して行うと表明した。
大学側の対応次第では損害賠償請求訴訟に切り替えることを検討する。

こうした被害者の調査や補償を、大学や被害当事者に
まかせるだけでなく、国が積極的に支援する必要がある、
というのが、最初の記事が主張していることです。
実際、わたしも国が責任を持って被害者を
補償する必要があることだと思います。


4.の被害者の補償は、徹底がもっとも難しいと思います。
被害者の全貌を把握することが難しいです。
10年-20年も前から、点数操作による不正な
合格者の抑制は行なわれていたと考えられます。
そんなむかしの入試の資料など保存しておらず、
とっくに破棄されているものがほとんどだろうと思います。

被害者の補償は金銭的なかたちになるものもあるでしょう。
それを国が責任を持って行なうとなると、
国家予算から補償金を支援することになります。
被害者の補償に税金を投入するということです。


ジェンダー差別主義者たちは法律の制定以上に、
国家予算を使って補償金を支援することに
強い反発を示すことが予想されます。
法律を定めるのはまだ精神面だけと言えますが、
被害者の補償は経済的なリソースを割かれることになるからです。

ジェンダー差別の被害者なんて、ジェンダー差別主義者は
もっともばかにしている人たちです。
そんなばかにしている連中のために、
自分の払う税金を取られるのですから、
こんなに不愉快きわまりないことはないでしょう。

それに加えて、もともと日本国民は災害などの
被害者の救済に不熱心で、「自己責任論」を持ち出して、
被害者が悪いことにして放置したがる人が多いです。
大学医学部の点数操作による被害も、補償に対して国民世論が
不熱心だったり反発する可能性があります。


東京医科大の点数操作を調査している第三者委員会の
報告書では、不当に不合格となった受験生に対して、
大学は補償をすることを呼びかけてはいます。

大学医学部の自己負担にするかぎり、
政府は「被害者に補償を」と言うだろうと思います。
政府が国家予算を投じて被害者の補償をしろと
言われるようになると、きゅうに動きが
鈍くなるのではないかという気がしています。

posted by たんぽぽ at 20:59 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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