「寡婦控除」を、未婚のひとり親にも適用する方向で、
政府与党が調整に入っています。
「未婚の一人親に寡婦控除適用へ=子どもの貧困対策で−政府・与党」
「寡婦控除 未婚に所得制限、事実婚は対象外 与党調整」
(はてなブックマーク)
2019年度税制改正の焦点の一つ「寡婦控除」の
ひとり親への適用拡大について、政府・与党は、
新たに加える未婚者には所得制限を設ける方向で調整に入った。
子どもの貧困対策と位置づけているためで、
事実婚の世帯を適用から外すことも検討している。
寡婦控除制度は、戦争で夫を失った妻の生活を
支える目的で1951年に創設された。
法律婚をした後、配偶者と死別や離婚したひとり親は、
所得から一定額が差し引かれるため、税の負担が軽減される。
婚姻歴のある女性のひとり親は所得制限はなく、
男性は年収500万円以下が対象。
離婚や死別後に事実婚をしていても適用を受けられる。
10月24日エントリで、未婚のひとり親にも寡婦控除を
適用することを求める電子署名をご紹介しました。
まがりなりにも声が届いたものと思います。
未婚のひとり親に適用拡大される可能性が出てきたと思います。
「未婚ひとり親家庭に寡婦控除を」
離婚や死別をした女性には、控除適用に所得制限はないですが、
未婚のひとり親には所得制限を設ける予定です。
よって今回の制度改善には限界があることになります。
それでも未婚のひとり親に適用がなかったときよりは、
だいぶ前進することになりそうです。
現行の寡婦控除は、法律婚関係にあって
離婚や死別をしたかただけを適用対象としたものです。
事実婚関係にあって離婚や死別をしたかたは、
寡婦控除の適用対象とはなっていないです。
政府は「事実婚の世帯を適用から外すことも
検討している」とありますが、これは事実婚関係にあって
離婚や死別をしたケースについては、
今後も適用対象外とする、ということだと思います。
「事実婚の不利益」は、まだ温存することになりそうです。
(事実婚の扱いについてのわたしの解釈は
違っているというかたがいらっしゃりましたら、
正確なことを教えていただけたらと思います。)
寡婦控除の未婚のひとり親への適用拡大に
積極的なのは公明党で、公明党が主導しているようです。
そして自民党には「伝統的家族観に反する」などと言って、
不満を持った議員も少なからずいます。
寡婦控除の適用拡大を巡っては、政府・与党は、
未婚のままひとり親となった人を対象に加える方向だ。
しかし、自民党内には婚姻関係を重視する
伝統的家族観に反するとして不満がくすぶっている。
適用拡大に積極的な公明党は「『子どもの貧困』という観点で
自民党を説得するしかない」(税調幹部)としていて、
対象を低所得世帯に絞り込み、事実婚の世帯も
対象から外すことで制度設計を詰める方針だ。
「伝統的家族観」というのは、例によって高度経済成長期に
定着した「標準家族」を「あるべき家族」とする
家族イデオロギーに対する「信仰」のことでしょう。
「家族思想という信仰」
この「信仰」を重視する自民党のお歴々にとっては、
未婚で子どもがいる女性というのは、
「信仰」から外れる「異教徒」だから、
社会制度で保証することが不満だということです。
「信仰としての家族思想」
「信仰としての家族思想(2)」
家族やジェンダーに因襲、反動的な現政権が、
寡婦控除を未婚のひとり親に適用拡大するというのは、
どういう風の吹き回しかと思ったかたもいると思いますが、
現在の状況が見えてきたようです。
未婚のひとり親への適用に所得制限を設けることや
事実婚関係にあって離婚や死別をしたかたを
適用対象外のままとするのも、自民党を説得するための
「妥協」ということのようです。
毎日新聞の記事を見たところ、公明党はいまのところ
自民党のお歴々を説得している段階のようです。
これは説得できない可能性もあるということだと思います。
今後の展開によっては、未婚のひとり親への
寡婦控除の適用拡大が頓挫したり、実現したとしても
だいぶ後退したものになることも考えられます。
付記:
現行の寡婦控除は「離婚や死別後に事実婚をしていても
適用を受けられる」ようになっています。
法律婚関係にあって離婚や死別をした場合、
そのあと事実婚をしていても「単身者」扱いで、
寡婦控除の適用対象になるということです。
事実婚関係にあって離婚や死別をした場合にも、
寡婦控除を適用するとなると、法律婚関係にあって
離婚や死別をしてから事実婚をしているかたの
適用が廃止される可能性があります。