「女子差別撤廃条約と最高裁判決」
「選択的夫婦別姓に反対することは人権侵害」かどうか、
という問題で、「四条烏丸(旧:もも281)」は、
2015年の最高裁判決で夫婦同姓の強制は合憲だから
人権侵害にならない、という主張をしたのでした。
それに対して、最高裁判決が合憲としたことは、
女子差別撤廃条約で差別的法規という勧告があることと、
日本国憲法の98条2項で、批准した条約を遵守することが
規定されていることを、わたしはお話しました。
それに対する「四条烏丸」からの返信は以下のツイートです。
そもそも日本国内で行動するにあたり、条約よりも国内法に準じて行動するのが正しいです。よって最高裁判決での夫婦同姓合憲を支持することは何ら問題ありません。また国連勧告ですが全ての国が全ての要求を受諾してないことからも、勧告を遵守しないことは憲法違反とみなすのは無理があります pic.twitter.com/CU6cdtS2Fo
— 四条烏丸 (@nanaarek20) 2018年11月23日
はじめに「日本国内で行動するにあたり、
条約よりも国内法に準じて行動するのが正しい」という
「四条烏丸」の「理屈」を見てみます。
どうしたらそのような「理屈」が出てくるのかと思います。
国際条約は憲法をふくめたすべての国内法より上位法です。
よって下位法である国内法を、国際条約より
優先させることは「法律の下克上」であり間違いです。
女子差別撤廃委員会も、国際条約は国内法に優先すること、
そして批准した条約の条項と整合が取れるように
国内法を整備する必要があることを、勧告しています。
あくまで条約が優先であり、国内法は条約に合わせて
定めるようにするということです。
「差別的法規」
18. 貴締結国が、民法改正の実現のために、
ただちに行動することを、委員会は催促します。
つまり、結婚できる最低年齢を、男女とも18歳にすること、
女子のみにある再婚禁止期間を廃止すること、
そして、選択的夫婦別姓制度を導入することです。
また、世論調査の結果ばかりを理由にしてはならず、
法体系の一部として、条約の条項と整合が取れるよう、
国内法を整備しなければならないこと、したがって民法改正は、
条約に批准した国が義務としてなすべきである、ということを、
委員会は指摘しておきます。
「条約の法制化」
20. 女子差別撤廃の分野において、本条約がもっとも効力があり、
広範かつ法的に拘束力のある、国際的な手段であることを、
貴締結国は認識するよう、委員会は催促します。
本条約が、国内の法体系の中で、完全に適用されうること、
必要なところでは、制裁措置の導入を含めて、
条約の規定が国内の立法体系に、完全に組み込まれることを
保証する措置をただちに取るよう、委員会は貴締結国に催促します。
今回提示してきた「四条烏丸」の「理屈」は
「ここは日本だから批准した国際条約は守らなくてよい」という
前に言ったことと、同じようなものだと思います。
それを表現を変えて繰り返しただけとも言えるでしょう。
そんな「理屈」がまかり通るなら、
なんのための国際条約かわからなくなります。
国際条約の存在意義がなくなるというものです、
という前と同じことを、わたしも言っておきます。
批准した国際条約を遵守すること定めた
日本国憲法の98条2項は、まぎれもなく「国内法」です。
「日本国憲法 > 第10章 最高法規」
第98条
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、
これを誠実に遵守することを必要とする。
「国内法に準じて行動するのが正しい」と言うなら、
憲法98条2項という「国内法」にもとづき、
女子差別撤廃委員会の勧告に従い、夫婦同姓の強制は
人権侵害だと理解し、選択的夫婦別姓を導入する
必要があることになります。
「四条烏丸」はなぜ「国内法」である
憲法98条2項を無視するのかと思います。
国内法であっても、自分に都合の悪いものは
守る気がない、ということでしょうか?
女子差別撤廃委員会は、日本国憲法の98条2項に
批准した国際条約を守る規定があることにも触れています。
「女子差別撤廃条約を守ることは、自分の国の憲法でも
決められていることなのに、なぜ憲法を守らないんだ?」と
言われているということです。
19. 貴締結国では、あらゆる形態の女子差別を撤廃する
基礎である本条約が、拘束力のある法的手段として、
中心的かつ重要な役割を演じていないことを、委員会は懸念します。
これについては、締結した条約はかならず尊守するという、
貴締結国の憲法98条2項の規定があるにもかかわらず、
本条約の条項を実行せず、また裁判手続きでも
直接適用されないことを、委員会は懸念します。