なかなか衝撃的なタイトルの論文があります。
「夫婦別姓は何故「嫌われる」のか?」
著者は日本とフランスの家族について
研究しているかたで、そうした関心のうちのひとつとして、
「婚姻制度」を設けることによる
「結婚の特権化」に注目しています。
そこからの派生として、日本で選択的夫婦別姓が
認められないのはなぜか、そしてフランスでは
どうなっているかについて、この論文では触れています。
婚姻制度に対しては様々な批判もあり,そして変容・瓦解して
きてはいるものの,いまだ家族制度の基盤となっている.
そのため筆者が強い関心を抱いているのが「結婚の 特権化」である.
今なおなぜ多くの人が結婚にアクセスしたがるのか,
またなぜ保守派・伝統 主義者は婚姻外のライフスタイルを
選択した人/選択せざるをえない人を社会的に排除したがるのか.
あるいは,婚姻の権利を万人に認めず,排除する人間を
つくりたがるのか.婚姻制度が,それ以外のライフスタイルを
差別化し,守られているのはなぜかである.
なぜ日本では夫婦別姓(夫婦別氏)が受容されないのか,
フランスではどのようになっているのか
といった点に論点を絞って整理してみたい.
というのは,夫婦同姓の強制は日本固有とまではいかないまでも,
それが事実上婚姻成立 要件となっていることから,
日本の婚姻制度の特徴といえるからである.
論文の構成は次のようになっています。
はじめに─ 関心の所在
1.日本における夫婦同姓の法的強制力
(1) もはや少数派の日本
(2) 2015年最高裁判決
(3) 旧姓使用の受容
(4) 別姓賛成派と賛成派、それぞれのスタンス
(5) 自らの姓に対するアイデンティティ
2. フランスにおける夫婦別姓
(1)フランスにおける議論の状況
(2)フランスにおける婚姻とは
(3)事実婚の増加と別姓
おわりに
はじめに日本で選択的夫婦別姓が
認められない現状について述べられています。
夫婦同姓の強制がほぼ日本固有であることや、
2015年12月の夫婦同姓の強制を合憲とした最高裁判決、
そして反対派や推進派のスタンスに触れています。
ついでフランスの状況について触れられています。
フランスではもともと夫婦同姓を強制しなかったので、
選択的夫婦別姓の議論が起きないこと、
そしてフランスにおける事実婚の
扱われかたについて、述べられています。
日本の事情については、多くの情報も出ていることですし、
すでにご存知のこともあると思います。
それでもいくつか真新しいお話もあると思います。
フランスの事情については、あまり情報がないことですし、
ご存知ないことも多く、新しい知見も
得られるのではないかと思います。