2018年12月17日

toujyouka016.jpg 労働力不足の無策はだれの責任か?

安倍晋三首相が「日本の労働力不足は安倍政権の前の
政権から存在した」なんて言っています。

「労働力不足に対してこれまで無策だったのではないか」
という批判があって、それに対する返答です。

「労働力不足、安倍内閣の前から存在=安倍首相」

 
ロイターの記事は短いので、全文引用します。

安倍晋三首相は6日午後、参議院法務委員会に出席し、
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法
(入管難民法)改正案を巡り、与野党の質問に応じた。
労働力不足にこれまで無策だったのでは、
との立憲民主党の小川敏夫委員の質問に対し、
「労働力不足は安倍内閣の前の政権から存在した」と答えた。
「労働人口が減少すると、伸びていく社会保障費の
財源をまかなうことができない」とも強調し、
外国人受け入れ拡大の必要性に理解を求めた。

この文脈で「安倍内閣の前の政権」を持ち出すのは、
批判の矛先を自分からかわそうということだと想像します。
労働力不足の原因をなんとなく「人のせい」にするのでしょう。
それで自分は前の政権からの失策のつけを払っていると、
印象付けようというのかもしれないです。


2012年12月の安倍内閣より前の政権から
労働力不足はずっと続いていたことは、事実ではあります。
その責任は大半が自民党にあることになります。
「夫が外で働き妻は専業主婦」という高度経済成長期に
定着した因襲的な家族観を、「伝統的家族観」と称して
維持することを、自民党は固執し推進したからです。

「家族思想という信仰」

日本は少子高齢化で労働力が不足するようになる、
ということは1980年代から予測されていました。
少子高齢化の進行を少しでも軽減するために
「伝統的家族観」から脱却する必要があることも、
いろいろな識者たちが主張していました。

それにもかかわらず、1980年代以降、21世紀に入って、
少子高齢化が目立つようになっても、大半の期間において
政権にあった自民党は、相変わらず「伝統的家族観」を
維持することにこだわり続けました。

「顧みられない家族政策」


「伝統的家族観」を標榜する自民党の
因襲的な家族政策や家族イデオロギーによって、
女性が子どもを持っても、仕事を続けられる
環境を整備することがなおざりになりました。
そのような環境の整備は「伝統的家族観」に反するからです。

かくして子どもを持つことが時間的、金銭的に
困難な人が多くなり、子どもを持たない人が増えてきました。
そして出生率が下がり、少子高齢化が進んで、
人口の減少をもたらし、それは現在の労働力の不足
という事態になったということです。

自民党が固執する「伝統的家族観」は、女性を非正規雇用や
正規雇用でも生産性の低い部門に回すという
企業慣習を、維持させるもとにもなっています。
それゆえ日本は労働1時間あたりの生産性が低くなり、
直接的にも労働力不足の原因となっていると言えます。

「2050年に先進国から脱落?(4)」


安倍政権や自民党の議員が労働力不足に関して
「安倍内閣の前の政権から」と言っても、
自分たち以外の「他人の責任」にはならないと思います。
それはかつて自分たちがしてきたことを指すからです。

安倍晋三ご自身も「伝統的家族観」の維持に
かなり直接的な貢献をしています。
たとえば「選択的夫婦別姓は共産主義のドグマ」とか
「子ども手当てはポルポト」とか言って、
出生率の回復や女性の労働力率の向上に
必要な政策に、反対や妨害をしてきました。

「夫婦別姓は家族解体が目標?」
「子ども手当てがポルポト?」



少子高齢化と人口減少、そしてそれらがもたらした
労働力不足という「歴史的失策」の責任問題、
とくに自民党の責任について、一度はっきりさせる
必要があるだろうと、わたしは思います。

そうしないと、あきらかに重大責任のある自民党でさえ、
少子高齢化を「他人ごと」のように扱いかねないからです。
過去の失策に対して自分たちに責任があることを
認識しなければ、これから行なう政策についても
責任をじゅうぶん持てないだろうと思います。





posted by たんぽぽ at 23:35 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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