2018年12月20日

toujyouka016.jpg 未婚のひとり親に寡婦控除見送り

11月25日エントリで、未婚のひとり親を寡婦控除の
適用対象にすることを、政府与党が検討している
ということを、お話しました。

この適用対象拡大は頓挫することになりました。
原因は自民党の「伝統的家族観」を
主張する人たちが反対したことによります。

「「家族観」自公に溝 ひとり親支援、折衷案で合意」
「未婚ひとり親支援合意 寡婦控除改正は見送り」

 
2019年度税制改正で、未婚のひとり親支援を巡り
自民党と公明党の家族観の違いがあらわになった。
公明は、配偶者と死別・離婚したひとり親向けの税制措置が
未婚に適用されないのは不公平だと主張したが、
伝統的家族構成を重視する自民党は
「未婚の出産を助長しかねない」として
一部譲歩にとどめ、折衷案で決着した。
公明は20年度改正で改めて要求する構えだ。

「伝統的家族観」はもう何度もお話していますが、
高度経済成長期に定着した「標準家族」を
「あるべき家族」とする家族イデオロギーに対する「信仰」です。
より具体的には、「夫が働き妻が専業主婦で
子どもはふたりくらい」というものです。

「家族思想という信仰」

この「信仰」のもとでは、子どもはすべて法律婚をした
夫婦から産まれなければならないです。
よって未婚の女性が子どもを持つことは
「信仰」からはずれる「異教徒」であり排斥の対象になります。

「伝統的家族観」の「信者」である彼らにとっては、
「未婚のひとり親」という「異教徒」に
寡婦控除を適用するなどという社会保障を
与えることは許さない、ということです。


寡婦控除の適用対象は議論の段階で、
自民党にいる「伝統的家族観」を「信仰」する議員たちが、
反発しているという情報はありました。

寡婦控除の適用拡大を巡っては、政府・与党は、
未婚のままひとり親となった人を対象に加える方向だ。
しかし、自民党内には婚姻関係を重視する
伝統的家族観に反するとして不満がくすぶっている。
適用拡大に積極的な公明党は「『子どもの貧困』という観点で
自民党を説得するしかない」(税調幹部)としていて、
対象を低所得世帯に絞り込み、事実婚の世帯も
対象から外すことで制度設計を詰める方針だ。

公明党は自民党を説得する段階とあったので、
寡婦控除を未婚のひとり親に適用する案は
頓挫する可能性があると、わたしは指摘したのでした。
この悪い予想が当たったことになります。

毎日新聞の記事を見たところ、公明党はいまのところ
自民党のお歴々を説得している段階のようです。
これは説得できない可能性もあるということだと思います。
今後の展開によっては、未婚のひとり親への
寡婦控除の適用拡大が頓挫したり、実現したとしても
だいぶ後退したものになることも考えられます。

公明党はさまざまな譲歩案や妥協案を作って、
説得を試みたようですが、およばなかったです。
「伝統的家族観」の「信者」はここでも譲歩や妥協を聞き入れない、
頑迷きわまりない人たちということです。


「伝統的家族観」を「信仰」する自民党の議員たちが、
寡婦控除を未婚のひとり親に適用することに
反対する理由として、より具体的には
「未婚の出産を助長しかねない」などと言っています。

「性教育を教えるとセックスを促進する」と
いうのと、同じような理屈かもしれないです。
ある意味彼ららしい偏見にもとづいた発想だと思います。

彼らはもっと不可解な反対の理由もあげています。
「夫婦別姓につながりかねない」(!)だそうです。
ここでどうして選択的夫婦別姓が出てくるのかと思います。
どうやっても関係ないです。
差別とか偏見以前に「意味不明」です。

子供の貧困対策に注力する公明は与党協議で、
婚姻歴の有無を問わず適用するよう要求。
来年の統一地方選と参院選のアピール材料とする思惑で、
「選挙協力への期待で自民は譲歩する」と見ていた。
だが「夫婦別姓につながりかねない」(政権幹部)と懸念する
自民は住民税のみの譲歩での決着を図る。

公明内では「恩恵が少ない」と異論が噴出。
北側一雄副代表が、自民党の小泉進次郎厚生労働部会長の
発信力に期待し同調を働きかける動きもあった。

自民党の「伝統的家族観」の「信者」たちが持ち出す
反対理由については、言いたいことはたくさんあります。
後日あらためて話題にすることにします。


自民党の反対を受け入れると制度が後退しすぎるからか、
それとも選択的夫婦別姓なんてとつぜん
関係ないものが出てきたからか、公明党からは
「恩恵が少ない」という「異論が噴出」しました。

そうしたら自民党は、(公明党が選挙協力の可能性を
出してきたこともあるのかもしれないですが)
公明党の要求は「暴力的」などと言ってきました。

これに自民は「公明の要求は暴力的」(税調幹部)と態度を硬化。

暴力的なのは自民党のほうです。
「未婚の出産を助長しかねない」「夫婦別姓につながりかねない」
なんて、差別と偏見にもとづく意味不明な理由で反対して、
ひとり親家庭の貧困を救済しないのですから。
「加害者が被害者になりすます」だと思います。


記事の見出しに「折衷案で合意」とあります。
これは児童扶養手当ての増額のことだと思います。

今回は子供の貧困対策で一定の支援策を導入。
未婚のひとり親を対象に住民税非課税となる
所得水準を条件付きで「135万円以下」に引き上げて
婚姻歴がある場合と同様にし、
19年度の児童扶養手当を年1万7500円上乗せする。

2020年度の税制改正で公明党はあらためて
寡婦控除を未婚のひとり親に適用することを要求する
構えとあるので、それでどこまで健闘できるかだと思います。

posted by たんぽぽ at 23:28 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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