「未婚のひとり親に寡婦控除見送り」
未婚のひとり親に寡婦控除を適用することが、
自民党の「伝統的家族観」を信奉する人たちによって
頓挫したというニュースです。
「「家族観」自公に溝 ひとり親支援、折衷案で合意」
「未婚ひとり親支援合意 寡婦控除改正は見送り」
自民党の「伝統的家族」を信奉する人たちの反対の理由に
「未婚の出産を助長しかねない」があったのでした。
2019年度税制改正で、未婚のひとり親支援を巡り
自民党と公明党の家族観の違いがあらわになった。
公明は、配偶者と死別・離婚したひとり親向けの税制措置が
未婚に適用されないのは不公平だと主張したが、
伝統的家族構成を重視する自民党は
「未婚の出産を助長しかねない」として
一部譲歩にとどめ、折衷案で決着した。
公明は20年度改正で改めて要求する構えだ。
彼らのいわゆる「伝統的家族観」とは、
戦後民法で規定され、企業利益のために高度経済成長期に
定着させた「標準家族」を「あるべき家族」とする
家族イデオロギーに対する「信仰」です。
「家族思想という信仰」
この「信仰」にもとづけば、子どもはすべて
法律婚をした夫婦から産まれなければならないです。
それゆえ未婚のひとり親は「信仰」にそぐわない
「異教徒」として、存在が否定されることになります。
このような反対理由には、ふたつ答えかたがありそうです。
ひとつは、未婚のひとり親のほとんどは、
好んで未婚親になったのではない、ということです。
やむをえない事情で未婚親になっています。
「未婚のひとり親に寡婦控除適用?」
「寡婦控除 未婚に所得制限、事実婚は対象外 与党調整」
「全てのひとり親を平等に扱ってほしい」。
九州に住む40代の未婚ひとり親の女性はこう訴える。
元婚約者から妊娠中に家庭内暴力(DV)を受け、
逃げるように同居先を出て未婚のまま出産。
難病を抱える小学3年の息子の治療時間確保のため、
正社員で働くことをあきらめ、月十数万円のパートで生計を立てる。
日本は未婚のひとり親の貧困率が50%を超えていて、
OECD加盟国の中では最高です。
こんな赤貧状態にみずから陥りたいと思う人なんて、
おそらくいないと思います。
「日本のひとり親世帯の貧困率」
もうひとつは、未婚のひとり親がいてなにが問題なのか?です。
社会にはいろいろな立場や事情を持った人がいます。
未婚のひとり親もそうなった立場や事情があります。
未婚のひとり親にも生きる権利は当然あるし、
それは保障されなければならないことです。
「サザエさんに見る日本の“家族信仰”は異常 『シングルマザーの貧困』著者が語る、標準以外を無視する社会」
水無田:私もすごく怖いです。民主主義国家が成立するためには、
一見デタラメで不愉快に見える人たちでも、
基本的人権があり、誰もが生きる権利を守ってもらえる……
ということも必要なのですが、果たしてこれが容認されるのかどうか。
この本を読んでもなお、シングルマザーは自分勝手で
無責任だと腹を立てる人もいるでしょう。
それはいいんです、思うのは自由です。
でも、シングルマザーもその子どもも安心して暮らせる社会は、
平等意識や人権意識のうえに成り立つものです。
そしてその意識は、民主主義社会の拠って立つ基盤でもあります。
これだけは、みんなで守っていただきたい。
シングルマザーのことはきらいでも、民主主義のことは
きらいにならないでください! というところですね。
未婚のひとり親は「伝統的家族観」に反するから
受け入れられないと思うなら、それでもいいと思います。
受け付けないものや気に入らないものを、
無理して好きになる必要はないです。
自分にとって気に入らない人たちや、
イデオロギーに反する生きかたをする人にも
基本的人権はあるということです。
それゆえ彼らが生きていくために、社会制度や社会福祉を
整備する必要があるということです。
“Even a cat may look at a king.”
(猫でも王様を見てよい)です。