日本は国際的に見て、夫より妻のほうが年収が高い
ケースが極端に少ないという内容です。
「夫と対等以上に稼ぐ妻の割合、日本は世界最低レベル」
(はてなブックマーク)
このお話はこれまで何度かしたことがありますが、
ここで改めて見ておきたいと思います。
2ページ目に、夫と対等以上の収入がある
妻の割合についての国際比較があります。
「夫の年収<妻の年収」となっている夫婦の割合です。
出典は、ISSP「Family and Changing Gender Roles IV - ISSP 2012」、
25歳から54歳までのパートナーのいる女性に訊いています。
調査対象国のほとんどは「夫の年収<妻の年収」という
ケースが30%以上あります。
アメリカ合衆国は34.8%、ドイツは32.2%、
スウェーデンは38.9%のケースで「夫の年収<妻の年収」です。
半数以上が「夫の年収<妻の年収」という国もあります。
調査対象国の中ではインドが52.9%、ポルトガル52.0%、
スイス51.9%の3カ国があります。
日本は「夫の年収<妻の年収」のケースは5.6%です。
これが諸外国と比較していかに低水準かは一目瞭然です。
日本で暮らしていると、夫の収入が妻の収入より多くて
あたり前のような気がして来ますが、
国際的に見ると異例中の異例ということです。
これは日本は世界的に見ても、雇用とジェンダーや
マリッジステートとの結びつきが、とりわけ強いことによります。
「結婚・ジェンダーと雇用問題」
「非正規雇用の待遇 性別と働き方にジェンダーバイアス」
性別と働き方の関連性が日本は特に強いことを、
岩上真珠氏の論文は海外との比較によって明らかにしている。
韓国やイタリアは性別規範の強い国として有名だが、
これらと比べても日本は性別と雇用形態の結びつきが強い。
男性は未婚、女性は既婚に非正規雇用が多い
といったように婚姻と雇用形態の結びつきも強い。
家族やジェンダーに因襲的な国として、
日本のほかにはイタリアや韓国があります。
イタリアは残念ながらデータがないですが、
韓国は「夫の年収<妻の年収」のケースが25.6%です。
調査対象国の中では下位になりますが、
日本と比べるとずっと割合が高いと言えます。
日本における雇用とジェンダーやマリッジステートとの
結びつきは、家族やジェンダーに因襲的な国の中でも
強いほうということになるでしょう。
かかる日本の状況のもととなったのは、
高度経済成長期に企業利益のために定着させた、
「標準家族」を「あるべき家族」とする
家族イデオロギーに対する「信仰」にほかならないです。
「家族思想という信仰」
この家族イデオロギーのもとでは、
「夫が働き妻が専業主婦」という役割分業が、
従業員の生産性が高くなる「あるべき家族」とされます。
妻に家庭のことを任せることで、夫は家庭のことを気にせず
仕事に専念できると考えられたからです。
このような役割分業が、本当に従業員の生産性を
高めたかどうかははなはだ怪しいです。
それでも経済成長の時代と重なったので、
このような家族イデオロギーが経済成長を
もたらしたと信じられ、「成功体験」として
日本の社会に深く根付くことになったのでした。
おそらくこのような家族イデオロギーに対する
「成功体験」は、日本に顕著なのだろうと思います。
これが日本が、ほかの因襲的な国とくらべても、
雇用とジェンダーやマリッジステートとの結びつきが
強固になるゆえんだと思います。
日本は雇用とジェンダーやマリッジステートが
強く結びついていることを示すのが、
年収の点で既婚男性がとくに優遇されることです。
「男は結婚で年収が増える」
差が出るのは既婚者なのよ。
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2016年2月7日
男性社員には「養う家族がいるだろう,がんばれ」,女性社員には「仕事はほどほどにね」ってね。 pic.twitter.com/awyOc1syAk
これは妻に家庭のことを任せきりにすることを
前提とした「長時間労働」といった企業慣習が
定着しているので、男性は女性より出世コースに乗りやすく、
年収の多い役職につきやすいことに加えて、
既婚男性は配偶者手当てや扶養手当てなどが
つくことがあると考えられます。
「WLBと女性管理職の割合」
「女性管理職と長時間労働」
「女性管理職が少ない理由」
女性は「長時間労働」のような既婚男性中心の
労働環境ではもともと不利なことに加えて、
企業も女性を正社員であっても生産性の低い
部門にしかつけないことなどが考えられます。
「2050年に先進国から脱落?(4)」
上の図は正社員にかぎった年収曲線ですが、
それでも既婚男性と既婚女性とで大きな差があります。
女性は結婚や出産によって低賃金のパートなどの
非正規雇用にまわされることが多いことを考えると、
既婚男性との年収差はさらに大きいことになります。
「子を持つと仕事をやめる」
「出産でパートに回される」
「女は結婚で年収が減る」