国際的に見ると、日本は「妻の年収>夫の年収」のケースが
極端に少ないというニューズウィークの記事です。
「夫と対等以上に稼ぐ妻の割合、日本は世界最低レベル」
(はてなブックマーク)
記事著者は、ジェンダー教育のひとつとして、
夫婦間の年収格差の国際比較を生徒たちに
見せるのはどうだろうか、というお話をしています。
日本の状況は普遍的ではなく、国際的にみるとアブノーマルな部類だ。
ジェンダーフリー教育の一環として、
こういうデータを生徒に見せてはどうだろうか。
日頃目にしている光景が普遍的ではないことを、
はっきりと理解することが重要だ。
日本は95%近いのケースで「妻の年収<夫の年収」です。
それゆえ夫のほうが妻より年収が高いことが、
空気のようにあたり前に思っている人もいると思います。
そして日本国内の感覚でそのまま考えて、
世界中のどこでもおおむね「妻の年収<夫の年収」が
一般的だと思っている人もいるかもしれないです。
日本で「当たり前」になっていることは、
国際的には「当たり前」でないどころか、
日本がとくに国際的に異常ということを示すには、
夫婦間の年収格差の国際比較は、
歴然としていてわかりやすい情報だと言えます。
「他国を知ることは自国を知ること」です。
国際比較によって自国を客観視、相対視することで、
自国の事情や問題をはっきりと認識する、
というのが、社会学のそもそもの目的です。
国際的に見れば日本はジェンダー平等が
浸透しているほうだと、なんとなく思っている人は、
日本人には結構多いだろうと思います。
フェミニズムの先生のところに、ジェンダー問題について
お話を聞きに来る学生さんでさえ、
日本のジェンダーギャップ指数の順位は、
「30位くらい」とか、「1-2位くらい」とか、
びっくりすることを答える子がいるくらいです。
「学生のジェンダー平等認識」
「「女性が輝ける社会」に女性はイラッとしている 日本の”男女平等”への違和感」
ジェンダーや男女平等の問題に興味を持って私たちのところに
やってくる学生の方々も、そのギャップに驚くようです。
日本におけるジェンダーの問題を語ろうとすると、
「海外のことを聞きたい」と言うんです。
初めから日本は平等だと思っているんですね。
それで、このジェンダーギャップ指数について話して、
日本は何位だと思うかと尋ねると「30位」と答えたり、
中には「1、2位かな」と答えたりする子も(笑)
このような日本に「幻想」を持っている人たちには、
「現実」を知ってもらう必要があります。
そうした「現実」のうちでは、夫婦間の年収格差は、
衝撃的かつ効果的だろうと思います。
「妻の年収>夫の年収」の割合についての国際比較は、
日本のジェンダー平等の立ち遅れが、
とりわけ顕著に現れているからです。
夫婦間の年収格差が日本はきわめて大きいことを
認識してもらえたら、つぎはなぜ日本はこのように
国際的に見て異常なまでに格差が大きいのか、
その理由を考えることになります。
それは1月6日エントリでお話したような、
日本は雇用とジェンダーやマリッジステートとの
結びつきが極めて強い国だからだということを、
お話することになると思います。
「妻が夫なみに稼げない日本」
学校教育でこの問題を扱うとなると、
聴いている生徒さんや学生さんの中には、
かならずしもジェンダー問題に対して
じゅうぶんな見識を持たない人も
(とくに男子生徒、男子学生の中には)いると思います。
「妻の年収>夫の年収」のケースの割合が、
日本は諸外国とくらべて極端に低いデータを見て、
「日本の女は年収の低い男を結婚相手に
選んでくれない」などと思って、「日本は世界一男性が
経済力で差別される男性差別国家」などと、
おかしなことを言い出す人(男性)がいました。
「夫婦の所得格差が大きい日本」
このように夫婦間の年収格差の原因について、
間違った理解を持たないよう、教える側はじゅうぶん
注意するという、教育的配慮も必要になるでしょう。