2019年01月12日

toujyouka016.jpg 旧姓に戻すことは離婚のハードル?(2)

前のエントリの続き。

「旧姓に戻すことは離婚のハードル?」

「離婚して旧姓にもどすとその負担があるから、
離婚のハードルになる」という「四条烏丸」の
「独自の論拠」をもう少し見ていきたいと思います。

 


一般に女性より男性のほうが、離婚することに
抵抗が大きいことが多い傾向があります。
自分の名字を取り戻すために、ペーパー離婚しようと
思っても、夫がなかなか応じてくれない、
というお話を聞くことがあると思います。

離婚後300日以内に産まれた子どもは
前の夫の子どもと推定する規定があります。
このせいで、あきらかに実質的にパートナーとなっている
男性の子なのに、夫婦生活の実態がなくなった
前夫の子と決められることが問題になっています。

これも前夫がなかなか離婚に応じて
くれないことで、起きることが多いです。
女性としては、新しい生活を早く始める必要から、
やむをえず前夫との婚姻関係を解消しないまま、
妊娠、出産に踏み切るということです。

「離婚後300日規定」

「離婚後300日規定」が問題になるケースで多いのは、
前の夫がなかなか離婚してくれないが、
現在の夫と新しい生活をはじめる必要から、
やむをえず妊娠・出産に踏み切った、というときです。
とくに出産にはタイムリミットがあるので、
余計に急ぐ必要が出て来る、ということもあるでしょう。

「四条烏丸」の理屈なら、結婚改姓することが
まずないゆえに離婚で名字が変わらない男性は、
女性よりも離婚のハードルが低いはずです。
それなのに女性より男性のほうが離婚に抵抗を
示すことが多いのは、どういうことかと思います。


離婚して旧姓にもどすときの手続きの負担が
なくなるから、夫婦別姓だと離婚のハードルが
下がるというなら、すでに選択的夫婦別姓が
導入された国で離婚件数が増えるというかたちで、
統計にそれが現れるはずです。

実際には、選択的夫婦別姓の導入によって、
離婚件数が増えたと考えられる国はどこにもないです。
これはいったいどういうことかと思います。

何度もお話していますが、選択的夫婦別姓の
反対派が示す事例はドイツとスウェーデンです。
どちらも「夫婦別姓で離婚が増えた」ことを
示すものでないことがわかっています。

「選択的夫婦別姓のまとめ(5)」

ドイツの選択的夫婦別姓は、法案可決は1993年ですが、
法案が施行されたのは1994年からです。
法案の施行の前から離婚が増えているのですから、
選択的夫婦別姓が原因でないことがわかります。
離婚率の正確な定義は人口1000人あたりの件数です。
OECD加盟国の離婚率の年次推移を見ると、
近年は離婚率が2から3のあいだに多くの国が集まっています。
スウェーデンの離婚率もこの中に入っていて、
日本とさほど変わらないし、それ以外の国とくらべても
取り立てて多くないことがわかります。

粗離婚率の推移 1960年-2002年

主要国の離婚率推移(1947〜)


旧姓にもどすことが離婚のモチベーションに
まったく影響しないかというと、そうではないです。
具体的な影響として、3月はほかの月より
離婚件数が高くなることがあります。

「春は離婚の季節」
「コラム  結婚・離婚はどの季節が多いのか」



多くのケースで、女性が子どもを引き取って
自分の戸籍に入れるので、子どもも母親と
いっしょに改姓することになります。
それで進学や進級で子どもが新しい生活をはじめる
時期に合わせて、離婚するということです。

旧姓にもどすことの離婚への影響はありますが、
それは「離婚の時期をずらす」程度であって、
「離婚自体を思いとどまる」にはいたらないようです。

posted by たんぽぽ at 23:44 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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