2019年01月14日

toujyouka016.jpg 改姓したくない気持ちを話したら

実際には結婚と離婚で2回改姓しているけれど、
本当は名字を変えたくなかったというかたのお話です。
基本的にご本人の体験談を述べていらっしゃりますが、
よそであまり見ないお話もあると思います。

「【夫婦別姓】について、離婚で姓を二度変えたわたしが考えたこと」

ここでは記事作者のかたが、最初に名字について考えたという、
中学生時代のお話を見てみたいと思います。

 
「結婚して名字を変えることが嫌」という
自分の気持ちを身近なおとな(塾の男性の先生)に
お話したのが、最初のエピソードとなっています。

性同一性障害とか同性愛とかでありがちな
シチュエーションだろうと思います。
「結婚改姓したくない」という気持ちも、
同様の「カムアウト」をする子はいるということです。

わたしが、いつから姓について考えたか
記憶をたどっていくと、中学生の頃にさかのぼります。
塾の先生(男性)に「結婚して名前を変えるのが嫌」だと
話したのを覚えています。そのくらい昔から、
姓を変えるのが嫌だったし、違和感がありました。

ちなみに、その当時、付き合っていた人がいたわけでも、
好きな人がいたわけでもないのに、なぜこんなことを
先生に相談したのかは、まったく覚えていません。笑

その時先生がなんて答えたかと言うと、
「相手の名前にすることを、ステータスに感じている女性も、
結構いるんだよ」というものでした。
中学生のわたしに、激震が走りました。
自分から進んで慣れ親しんだ名前を変える人が、
この世にいるのかと、信じられませんでした。
すごく気に入っていない名前ならともかく。

塾の先生の答えが「相手の名前にすることを、
ステータスに感じている女性も、結構いるんだよ」です。
名字を変えたくない気持ちを汲もうとせず、
とにかく「ふつうの人や多数の人はこうだ」という
お話をする、いかにもマイノリティに無理解で
無神経なマジョリティという感じです。

こうした文脈で「ふつう」や「多数派」のことを
持ち出すのは、「お前もふつうの多数派に合わせろ」という
メッセージにもなりかねないと思います。


かかる塾の先生の答えを聞いた中学生時代の
記事作者は、激震が走ったとあります。
といっても、マイノリティに対する無理解さに
いきどおりを覚えたのではないようです。
自分が慣れ親しんだ名前を変えられる人がいる
ということが、信じがたいことだったからです。

この記事作者にとっては、それくらい自分の名字を
変えないことが当然であり、名字を変えることは
違和感が強いということなのでしょう。


このお話はいささか示唆的だと思います。
記事作者は、塾の先生からお話を聞くまでは、
自分のように結婚改姓したくない子のほうが、
むしろふつうだと思っていたということだからです。

(夫婦別姓の家庭に産まれた子どもは
ものごころついたときから、それを当たり前に思うので、
夫婦や親子で別姓であることに疑問や違和感を
持たないのと同様ではないかと思います。)

「女性は結婚したら改姓するものだ」とか、
それを「社会の一般的なことだ」と考える
「カチカン」も、外から吹き込まれる
(外から吹き込まれてそう考えるようになる
子がいる)ことを示していると言えます。


「相手の名前にすることを、ステータスに感じている
女性も、結構いる」という塾の先生の認識自体も、
異論を述べる余地はありそうです。

12月11日エントリでお話しましたが、
結婚改姓を喜んだり、「結婚の証」と考える女性は、
ことのほかいないらしいという調査があります。

「結婚改姓を喜ぶ女性はいないらしい」

改姓にあたっての感慨を尋ねたところ,
やはり多いのは「そういうものだと思った」
「特に 何とも思わなかった」というものであったが,
やはり当然のように女性が改姓しなければ
ならないことに疑問を感じていた人もいた.
そして非常に多かったのが「改姓はとても面倒だった」という意見である.

一方,「是非変えたいと思った」
「それこそ結婚の証だと思った」という程の
強い思い入れも見られなかった.
この点,学生など20歳前後の場合,とりわけ女性は
ロマンチック・ラブ概念が先行しているため,
改姓に一種の憧れもあるようだが,実際に婚姻を経験している
女性たちにはそれ程の思い入れもなかったようである.

改姓にいちばん抵抗のない女性でも
「とくになんとも思わなかった」です。
女性が改姓すると決まっていることを
疑問視するかたもいるし、改姓はとても面倒だった
という意見を述べるかたもたくさんいます。

「結婚改姓して夫の名字になることをステータス
感じる女性」というのは、よく言われますが、
本当にいるのか疑わしくなってきます。
「女性が改姓して夫婦同姓」という現状を
維持するために、「男社会」が作り出した
「幻想」ではないかとも、わたしは少し思っています。


中学生時代の記事作者は、なぜ自分は結婚改姓を
したくないという気持ちを、よりによって
塾の男性の先生に打ち明けたのかとも思います。
相談相手として、あまり妥当とは思えないです。

結婚改姓したくないというお話をしようと思った
経緯を覚えていないと記事作者は言っているので、
塾の先生をその相談相手に選んだ理由も、
おそらく覚えていないのだろうと思います。

塾の男性の先生では、結婚改姓の問題に関しては、
ステレオタイプな認識しかない可能性が高いです。
「結婚改姓がステータスの女性もいる」なんて
紋切り型のことしか言えなかったのも、見識がないゆえに、
結婚改姓したくない女性の気持ちがわからなかった、
ということではないかと、わたしは想像します。


それどころか男性ですから、結婚改姓したくない女性を
不愉快に思っている可能性も考えられます。
そうだとするとどんな心ないことを言うかわからないです。

記事から察するに、著者はその先生から心ないことは
言われなかったらしく、それはよかったです。
心ないことを言われていたら、衝撃が走るどころか、
あとまで残る心の傷を負ったかもしれないです。

マイノリティが「カムアウト」するときは、
相当慎重に相手を選べということになります。
それでも当時中学生だった記事著者は、
そこまで考えがいたらなかったのかもしれないです。
結婚改姓したくないほうが当然と思っていれば、
なおさらかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 00:10 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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