著書『武器としての世論調査』の番外編として、
平成時代の政治の無策の結果として
少子高齢化があることを指摘しています。
「そしてあの時、少子化を避ける最後の道をなくした――「武器としての世論調査」番外編B 」
家族政策、人口政策の無策によって、
平成時代は子どもの人口崩壊という歴史的失策を演じた、
というお話を前にわたしはしました。
それと同様の問題意識だと思います。
「平成の歴史的失策・子どもの人口崩壊」
人口減少と少子高齢化の原因は、
バブル崩壊以降、経済が後退して不況となり、
多くの若年層の生活が不安定と
なったことを理由にあげています。
それゆえ子どもを作れるだけの経済力を持つ人が
少なくなり、子どもを持たない(持てない)人が
増えていったということです。
終身雇用が崩壊し、労働者の権利が後退し、
非正規化が進み、ブラック企業が野放しにされ、
多くの人たちが、安定した雇用の中で
結婚して子供を育てるという従来の生活スタイルを
作ることができなくなっていったのです。
社会に出ていく時にいつもそういう展望を
描けない道へ進まざるを得なかった人たちがいました。
政治はそれに対して無力であり、政治に距離を置く層や、
政治に失望した層が多く生まれました。
子どもを持たない理由、その前段階としての
結婚しない理由として、雇用が安定せず、
経済的に余裕がないから、ということは、
いくつかの調査で指摘されています。
「未婚・晩婚化の意識調査」
「結婚願望と交際経験の減少(2)」
「若年層の子ども願望の低下」
ノートでは、このような経済的な事情ゆえに、
子どもを持てない人が多いという社会状況を
政治が解決してこなかったことを指摘、
さらにそうした政治の無力、無策の結果として
平成年間の少子高齢化があると、考察しています。
第2次ベビーブームの世代が少なからず子供を
作らないという選択をしたことは、
少子高齢化を決定的なものにしてしまいました。
第2次ベビーブームの世代が親となりえた
1990年代からしばらくの時期こそ、
人口回復の最後の機会だったからです。
非正規化雇用を進め、労働者の解雇をしやすくし、
ブラック企業やサービス残業を
野放しにしてきたのは政治の選択です。
前回の記事では「政治はそれに対して無力であり」と
書きましたが、本当にはっきり書くならば
それは政治が行ったことです。
人口問題に関して、政治が無力で無策だった
大きな理由に、少子高齢化を緩和する
効果的な家族政策は、ジェンダー平等を
志向するものであることがあります。
社会のありかたに対して主導的な立場にある
既得権益層は、「オンナコドモはだまっていろ」
「オンナコドモのことはくだらない」と考える、
政治的ミソジニーでした。
それゆえ効果的な家族・ジェンダー政策に対して、
政治は積極的にならないどころか、
むしろ反対したり逆行する主張をしたり
施策を行なったりしてきたのでした。
「子どもの人口崩壊・だれがもたらした?」
「子どもの人口崩壊・既得権益の抵抗」
「歴史的失策を支える政治的ミソジニー」
記事で挙げられている雇用や賃金の問題は
労働問題と同時にジェンダー問題でもあります。
日本は雇用とジェンダーやマリッジステートが
わかちがたく結びついています。
「結婚・ジェンダーと雇用問題」
女性を不安定な非正規雇用にまわす、
正規雇用でも生産性の低い部門にまわす、
対称的に既婚男性を優遇するといったことが、
経済の停滞と若年層の生活の不安定を
もたらすことにもなるわけです。
「男女別正規・非正規雇用の数」
「2050年に先進国から脱落?(4)」
「男は結婚で年収が増える」
三春充希氏の記事にはジェンダー問題
という視点が出てこないのは残念です。
それでも平成時代の人口減少と高齢化を
多大なる社会の損失と認識したことと、
その責任が政治にあることをはっきり指摘したことは、
とても大切なことだと思います。
平成30年間の莫大な損失に対して
政治の責任を問いたがらないばかりか、
歴史的失策の存在自体、認識したがらない人たちは、
まだまだ少なくないからです。
「顧みられない家族政策」
ずっと指摘され続けていた自分たちの歴史的失策をあたかも何も対策ができない「災害」のように他人事のように語る自民党とそれを許し続ける日本の人々とメディア。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2015年6月22日
三春充希氏は1988年生まれです。
これから社会の第一線に出て活躍する世代です。
そこへ平成時代の歴史的大失策という
大きな負債を背負うことが宿命づけられるのは、
いかなる心境かと思います。
ここで取り上げたノートに関しては、
直接の責任者でなくその次の世代のかただから、
前の世代の歴史的失策をはっきり指摘できて、
責任追及もできることもあるのでしょう。
人口減少、少子高齢化という歴史的失策を
もたらした平成時代のおとなたちは、
その解決を次世代に押しやることになったようです。
(わたしも平成時代のオトナの一員として、
世代の交代を感じるとともに、
もうしわけなく思っている。)
付記:
この記事はもともと投票率が低いことと、
無党派層の多いことの理由を考察したものです。
「なぜ投票率はこんなにも低いのか? なぜ無党派層はこんなにも多いのか?
それは『ある時』に始まった。――「武器としての世論調査」番外編A 」
経済状況の悪化と生活の不安定に対して
政治が無力、無策だったことが
政治に対する不信や無関心となり、
投票率の低下や無党派層の増加を
もたらしたと考察しています。
そのような政治の無力、無策がはっきり
社会現象としてあらわれたこととして、
平成年間の人口減少と高齢化という
「歴史的失策」を挙げています。