2019年08月25日

toujyouka016.jpg 人口ボーナスと経済成長

8月24日エントリの続き。

国連人口部の調査結果の報告書を見ると、
最近になって出生率が低下したことで、
生産年齢人口の割合が高まり
「人口ボーナス」の時期に入る国が
たくさんあるという指摘があります。

「世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)」
「世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか」

 
4. 生産年齢人口の増大が、経済成長のチャンスになる国も

サハラ以南アフリカのほとんどの国と、
アジアやラテンアメリカ・カリブ地域の一部の国では、
最近になって出生率が低下したことで、
生産年齢人口(25~64歳)が他の年齢層よりも
早いスピードで増加しています。

これは、「人口ボーナス」と呼ばれる
著しい経済成長が期待できる機会が
訪れていることを示唆しています。
この「人口ボーナス」から利益を得るためには、
政府が特に若者向けの教育と保健に投資し、
持続可能な経済成長を促進する条件を整備すべきです。

「人口ボーナス」とは、生産年齢人口が多く、
子どもや高齢者が少ないので、福祉や教育に
社会的リソースを回す必要が少なく、
経済成長に回せるので、急速な経済発展が
期待できる人口構成になっている状態です。

報告書によると、これまで開発途上国と
言われたうちの相当数の国が、
人口ボーナスに入っています。
この時期に持続可能な経済成長を促進できる
条件を整備できるかどうかが、
そのつぎの時代の明暗をわけるのでしょう。


日本にもかつて高度経済成長期という、
人口ボーナスの時代がありました。
この時期に日本は出生率が急激に低下しました。

1940年代には出生率は4以上でしたが、
1950年代に入って急激に下がり、
欧米の主要国より低くなりました。
1950年代の末から1970年代の前半まで、
出生率は2程度が続きます。

かくして子どもがあまり増えないことで、
生産年齢人口の割合が高い「人口ボーナス」となり、
1960年代の日本は高度経済成長を
遂げることができたのでした。

「合計特殊出生率の推移(日本及び諸外国)」




高度経済成長期の出生率の低下は、
政策による産児制限という人為的なものです。
子どもの数はふたりくらいがよいという意識を
国民全体に普及させたことによります。

この産児制限は功を奏したことは、
出生率の年次推移が示しています。
産児制限がなかったら、日本の出生率は
1960年代も欧米の主要国より高い状態が続き、
欧米諸国より低くなるのは、
1980年代だったかもしれないです。


高度経済成長期に産児制限をしたのは、
従業員が家に帰って来たとき、
子どもが多いとじゅうぶん休めなくて
生産性が低くなるだろうという判断でした。

子どもの扶養手当てを多くの企業が
支給していたので、企業の負担を減らすために、
子どもの数を減らそうとしたこともあります。

子どもの数が少ないことで、
本当に従業員の生産性が高まったか
どうかはわからないです。
企業は扶養手当ての負担が減ることで、
経済成長に役立ったでしょう。


社会全体から見れば、出生率が低くなることで、
子どもの福祉や教育への負担が減って
人口ボーナスとなり、経済成長を遂げることに
なったことはたしかだと言えます。

高度経済成長期の日本の産児制限は、
上述のように従業員の生産性と、
企業の手当ての負担軽減のためであり、
人口ボーナスをもたらすと考えて
導入したものではないと思います。

posted by たんぽぽ at 18:18 | Comment(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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