2019年08月28日

toujyouka016.jpg 「社会の最小単位」の「家族」とは?

「社会の最小単位は家族」という認識があります。
「家族は最小単位の社会であって、
社会の最小単位は個人」という
当然の批判は、ここでは置いておきます。

この「社会の最小単位は家族」という認識は
日本最大級の右翼団体、日本会議がよく使います。
自民党の改憲草案にも登場します。

 
日本会議では設立総会や記念大会で、
「社会の最小単位」という概念が出てきます。

「平成14年11月・設立5周年大会開催」

社会を構成している最小単位である家庭の崩壊は
目を覆うばかりで、いっときの猶予もありません。

「設立総会 > 一、黛敏郎前議長を偲んで」

夫婦別姓の問題もそうであります。
少なくとも社会の秩序の最小の単位が夫婦であるとするならば、
その夫婦がお互いに違う姓を名乗って何が夫婦なのでしょうか。
何が社会構成の一小単位なのでしょうか。


自民党の改憲草案では「家族は社会の
自然かつ基礎的な単位」と規定されています。

「自民改憲草案・家族思想」
「自民党憲法草案の条文解説」



この「社会の最小単位は家族」の
「家族」とは具体的にどのような
家族のありかたを指すのかと思います。
上のように「家庭」になったり
「夫婦」になったり表現が揺れるようです。

自民党の憲法草案を解説するサイトでも、
「『家族』が何を指すのかが解釈に
ゆだねられています」とあって、
具体的な家族のありかたが
はっきりしていないことを指摘しています。



日本会議の設立総会の開会の辞で、
選択的夫婦別姓が名指しで、
「社会の最小単位」という概念を
持ち出して否定されています。
夫婦別姓の家庭は「社会の最小単位」の
「家族」に含まれないことはたしかでしょう。


彼らが「社会の最小単位」と考える家族で
思いつくのは、戦前のイエ制度的な「家族」です。
自民党の憲法草案は、現在の憲法24条が定める
家族観やジェンダー観を否定し、
戦前へ回帰しようとするものです。

よって自民党の憲法草案や日本会議が
意識する「社会の最小単位」は、戦前の家族の
ありかたであると考えられます。

「時代の正体〈404〉24条の危機(4)守るべき理由」

この国は家族国家と呼ばれてきた。
簡単に言うと、家族を構成する家が国家を構成する最小単位。
家は地域社会共同体のためにある。
その地域社会共同体は国家のためにある。
その中で個人は、家のためであるともに、
まっすぐ上にいって国家のためにあるということ。

個人の尊厳という概念はそのときにはなかった。
当時は家父長制的家制度が国家を支えていた。
その国家という家の長に立つのが天皇であった。



日本会議の設立総会では、
「社会の秩序の最小の単位が夫婦であると
するならば」とも言っています。
「最小単位」が「夫婦」というのは、
あまり「イエ制度」的ではなく、
むしろ戦後の「核家族」的とも言えます。

そう考えると、「社会の最小単位」の
「家族」とは、企業利益のために、
高度経済成長期に浸透させた家族イデオロギーが
規定する「あるべき家族」です。

「家族思想という信仰」


日本会議や自民党の憲法草案が想定する
「社会の最小単位の家族」とは、
どのような家族なのか、はっきりしないです。
(少し調べたけれど、はっきり書いている
記事はないようです。)

わざとどんな「家族」かを
はっきりさせないのかもしれないです。
はっきりさせると批判されやすくなるので、
それを防ぎたいことはありそうです。
あいまいにすることで誤解させて、
支持されやすくすることも考えられます。

posted by たんぽぽ at 22:31 | Comment(2) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさま、こんにちは。
社会の最小単位は家族
という言葉に本来の社会の最小単位である
個人の人権は無視したいという
気持ちがよくあらわれていますね。
憲法24条の人権の尊重と男女平等の精神からは
夫婦別姓が導かれるわけで、
日本会議が夫婦別姓に頑迷に反対を叫ぶ理由がよくわかります。敵の本丸なんですね。
人権を踏みにじりたいし、男女平等なんて認めない、
という本音に辟易します。
9条と24条を改正すれば、徴兵して戦争ができます。
安倍首相は韓国と対立することで国民を煽動し、軍事的緊張状態を招くことにより、憲法改正を容認する世論を作り出そうとしているのではないでしょうか。
Posted by はな at 2019年08月29日 06:37
はなさま、
こちらにコメントありがとうございます。

>社会の最小単位は家族
>という言葉に

ようは自分たちにとって、
都合のいい家族のありかたを
押し付けるための、方便なのですよね。

それが戦前のイエ制度なのか、
高度経済性成長期の「理想の家族」なのか、
という問題はありますが。


>敵の本丸なんですね

彼らの「最小単位」の家族がどんなものにせよ、
夫婦別姓が「都合のいい家族のありかた」に
含まれないことはたしかです。

敵の本丸になったのは、
やはりわかりやすいからではないかと思います。
結婚改姓したくないかたにとっては、
実に不幸なことだと思います。


>安倍首相は韓国と対立することで国民を煽動し、

その可能性は高いです。
安倍首相はうまく世論誘導することを
考えているのでしょう。
要注意ですが、抵抗しきれるかどうかは
いささか心配です。
Posted by たんぽぽ at 2019年08月29日 22:10
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