9月30日に原告が棄却となった、
連れ子の苗字に関する夫婦別姓訴訟の
判決を見てみたいと思います。
「夫婦別姓訴訟、請求退ける 弁護士が敗訴、東京地裁」
「夫婦同姓「違憲とまでは」 東京地裁、原告の訴え棄却」
「夫婦別姓訴訟、弁護士が敗訴 東京地裁」
判決の要点のひとつはこちらです。
2015年12月の最高裁大法廷回付以来、
夫婦同姓の強制が違憲となるような
事情の変化がない、などと言っています。
品田幸男裁判長は「夫婦同姓を合憲とした
平成27年の最高裁判決後、夫婦別姓の導入について
議論が高まっているものの、民法の規定が違憲となるような
事情の変化があるとは言えない」と指摘した。
最高裁判決以来、選択的夫婦別姓に関して
どんな事情の変化があったか、
いくつか見てみることにします。
ひとつは2018年2月に発表された
内閣府の「家族の法制に関する世論調査」です。
選択的夫婦別姓の是非に関する設問は、
「賛成」が42.5%、「反対」が29.3%で、
賛成が反対を10ポイント以上、上回っています。
「家族の法制に関する世論調査」
「2.選択的夫婦別氏制度の導入に対する考え方」
2006年と2012年の世論調査では、
「賛成」と「反対」がほぼ同数でした。
2018年の調査では、これらの2回から
「賛成」が急激に増えたことになります。
もうひとつは自民党の候補者の
選択的夫婦別姓の賛否の割合です。
最高裁判決前の2014年の衆院選のとき、
自民党候補者の65%が反対でした。
そのあと選挙のたびに反対の割合は下がり、
2019年の参院選のときは、
反対は28%まで落ち込みました。
自民党からはっきり選択的夫婦別姓に反対と
言う人が大きく減ったということです。
「選択的夫婦別姓・自民党から反対が減った」
「選択的夫婦別姓・自民党に中立が増えた」
賛成
2014年: 9%
2016年: 14%
2017年: 15%
2019年: 19%
中立
2014年: 26%
2016年: 41%
2017年: 43%
2019年: 53%
反対
2014年: 65%
2016年: 44%
2017年: 42%
2019年: 28%
内閣府の世論調査は、高齢層が多く回答者に
含まれることもあって、選択的夫婦別姓に賛成の
割合がほかの調査より少ない傾向があります。
その世論調査でも「賛成」が「反対」を
10ポイント以上上回っています。
今回の夫婦別姓訴訟で判決を下した裁判所は、
世論調査で選択的夫婦別姓に賛成が
反対より多くなったというだけでは、
「夫婦同姓の強制を違憲とするほどではない」と
考えていることになります。
内閣府の世論調査は、反対が多いときは
政府や自民党が、選択的夫婦別姓の導入に
反対する理由として使ってきたものです。
そのような説得力のある世論調査でも、
賛成が反対より多くなっただけでは、
「違憲とするほどでない」そうです。
そうなると、日本の裁判所が夫婦同姓の強制を
違憲と判断する「事情の変化」とは、
どのようなものなのかと思います。