「アメリカ合衆国で改姓しない女性は少ない」と
熱弁をふるっている選択的夫婦別姓の反対派
「おはよう東京」のブログがあります。
「我が心、本日も晴天なり」
次のエントリは夫婦別姓の場合の
子どもの苗字について問題にしています。
選択的夫婦別姓の反対派(非共存派)の
主張としては定番だと思います。
「選択的夫婦別姓 「別姓夫婦の子の氏は、今までと変わらない」は本当か?」
「おはよう東京」は夫婦別姓の場合の
子どもの苗字について懸念があると言っています。
その「懸念」とは具体的になんなのか、
予想はつきますがいまは置いておきます。
夫婦別姓を推進する人たちは、
「別姓夫婦の子どもの氏はどうするのか?」という
懸念に対して、「子の氏は戸籍筆頭者の氏になる。
今までと変わらない」となぜか判で押したように答えるが、
そもそもこれは懸念に対する答えになっていない。
ここでは「子の氏は戸籍筆頭者の氏になる。
今までと変わらない」となぜか判で押したように
答える」の部分を問題にしたいと思います。
わたしが疑問に思ったことは、
選択的夫婦別姓の推進派は「判で押したように」
そのように答えると決まっては
いないのではないか?ということです。
1992年に法制審議会が作った3案のうち、
「選択的夫婦別姓」と呼べるのはA案とB案です。
「新しい夫婦別姓訴訟・とまどい」
[A案]
1 夫婦の氏(750条関係)
(1) 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、
夫又は妻の氏を称するものとする。
ただし、この定めをしないこととすることもできるものとする。
(以下、この定めをして夫又は妻の氏を称する夫婦を
「同氏夫婦」といい、この定めをしないで、
それぞれ婚姻前の氏を称する夫婦を「別氏夫婦」という。)
(2)別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、
子が称する氏として定めなければならないものとする。
(3)別氏夫婦は、婚姻後、戸籍法の定めるところにより
届け出ることにとって、夫又は妻の氏を
称することができるものとする。
[B案]
1 夫婦の氏(750条関係)
(1) 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、
夫又は妻の氏を称するものとする。
(以下、この定めをして夫又は妻の氏を称する夫婦を
「同氏夫婦」といい、この定めをしないで、
それぞれ婚姻前の氏を称する夫婦を「別氏夫婦」という。)
2 実子の氏(790条、791条関係)
(2)別氏夫婦の子の氏
別氏夫婦の子は、その出生時における父母の協議により
定められた父又は母の氏を称するものとする。
子どもの苗字に関しては、
A案は「父母のどちらかの苗字に統一」で、
「婚姻時に定める」となっています。
B案は「出生時に父母のどちらかから選ぶ」で、
「出生ごとに定める」となっています。
現状で選択的夫婦別姓法案が提出された場合、
A案になる可能性が濃厚ですが、
望ましいのはB案であり、
B案を支持するかたも多いと思います。
選択的夫婦別姓の実現を求めるかたが
「夫婦別姓の場合、子どもの苗字は
どうするか」と訊かれた場合、
「A案とB案がある」「B案のほうが望ましい」と
答えるかたも多いと思います。
よって「子の氏は戸籍筆頭者の氏になる。
いままでと変わらない」と判で押したように
答えたりはしないと思います。
法務省が提出を準備している
選択的夫婦別姓法案は、A案に準拠しています。
「子の氏は戸籍筆頭者の氏になる」も、
A案の扱いを述べているのでしょう。
「民法の一部を改正する法律案要綱」
第三 夫婦の氏
二 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の
定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、
夫又は妻の氏を子が称する氏として
定めなければならないものとする。
第四 子の氏
一 嫡出である子の氏
嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に
父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)
又は父母が第三、二により子が称する氏として定めた
父若しくは母の氏を称するものとする。
それでは当然、平等に生まれの氏を名乗る権利は保障されません。40年間法改正議論が続きました。
— nana/井田奈穂/選択的夫婦別姓・全国陳情アクション (@nana77rey1) February 1, 2020
5年間の法学者、法務省、議員の間で議論の末、1996年には自民党政権下で法制審議会が答申。https://t.co/KMzd8yl5Ls
答申案では子の氏は、今とまったく同じ決め方(結婚時に戸籍筆頭者に統一)です。
前述のように選択的夫婦別姓法案が
提出される場合、A案に準拠した法務省案が
提出されることになるでしょう。
それを踏まえたなら「夫婦別姓の場合、
子どもの苗字はどうなるか?」と訊かれた場合、
「子どもの苗字は戸籍筆頭者の苗字になる」と
答えるのはどこも間違っていないし、
ほかに答えようがないと言えます。
「戸籍筆頭者の苗字になる」と答える
選択的夫婦別姓の推進派のかたは、
提出予定の法案の内容について
訊かれたと考えた、ということです。
「おはよう東京」が夫婦別姓の場合の
子どもの苗字に関する自分の「懸念」に
ついての意見を訊きたいなら、
その趣旨が伝わるように、
相手の推進派のかたに訊くことです。