2020年05月12日

toujyouka016.jpg 法務省の担当者が指摘した?

5月9日エントリの続き。

八木秀次氏はこれまで述べたこと
(たとえば「ひとつの戸籍に苗字がふたつに
なると相続関係に影響が出る」など)は、
1996年の時点で法務省の担当者が
指摘していた問題だと言っています。

「現状のまま導入すれば膨大な労力が?「選択的夫婦別姓」を阻む日本の戸籍制度の課題とは」

  
こうした点は、平成8年の段階で選択的夫婦別姓の
制度設計をしようとした法務省の担当者が
指摘している問題でもある」。

ここでの「法務省の担当者」はより具体的には、
1992年の法制審議会の答申書の作成に
かかわった人たちだろうと思います。


八木秀次氏が「アベマプライム」で
主張したことを、法制審議会のメンバーは
本当に指摘していたのか、という疑問があります。

法制審議会にかかわるくらいなら、
自身が作る法案にはくわしいでしょう。
「選択的夫婦別姓は相続にも関係する」なんて、
初歩的な誤解をするとは思えないです。

「選択的夫婦別姓が相続の手続きに響く?」


法制審議会が作った案は3つあります。
このうち法制審議会が積極的に、
法制化を主張するのはA案です。

A案: 夫婦別姓、子どもの苗字は夫婦のどちらかに統一
(法制審議会が主張する案)
B案: 夫婦別姓、子どもの苗字は出生ごとに決める
(野党提出案)
C案: 民法上は夫婦同姓。戸籍に旧姓を記載できる。
(いわゆる旧姓の通称使用案)

[A案]
1 夫婦の氏(750条関係)

(1) 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、
夫又は妻の氏を称するものとする。
ただし、この定めをしないこととすることもできるものとする。
(以下、この定めをして夫又は妻の氏を称する夫婦を
「同氏夫婦」といい、この定めをしないで、
それぞれ婚姻前の氏を称する夫婦を「別氏夫婦」という。)

(2)別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、
子が称する氏として定めなければならないものとする。

(3)別氏夫婦は、婚姻後、戸籍法の定めるところにより
届け出ることにとって、夫又は妻の氏を
称することができるものとする。
[B案]
1 夫婦の氏(750条関係)

(1) 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、
夫又は妻の氏を称するものとする。
(以下、この定めをして夫又は妻の氏を称する夫婦を
「同氏夫婦」といい、この定めをしないで、
それぞれ婚姻前の氏を称する夫婦を「別氏夫婦」という。)

2 実子の氏(790条、791条関係)
(2)別氏夫婦の子の氏

別氏夫婦の子は、その出生時における父母の協議により
定められた父又は母の氏を称するものとする。
[C案]
1 夫婦の氏(750条関係)

(1)夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、
夫又は妻の氏を称するものとする。

(2)婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、
婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより
届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称と
することができるものとする。

(3) (2)により婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又は妻は、
戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、
その呼称を廃止することができるものとする。

A案は子どもの苗字の統一を要求する
とはいえ、原則は選択的夫婦別姓です。
選択的夫婦別姓を導入した場合の
戸籍のフォーマットもすでに用意しています。

「1戸籍にふたつでもファミリーネーム」

そんな法制審議会が「選択的夫婦別姓を
導入すると戸籍が問題」なんてことを、
「問題」として指摘するとも思えないです。


法制審議会にもいろいろなかたが
いるでしょうから、家族やジェンダーに関して
因習・反動的な人もいるかもしれないです。

そうした人が選択的夫婦別姓を認めると
戸籍に問題が起きるということを
主張していた可能性は考えられます。

そうだとしたら、法制審議会の主流の
見解ではないけれど、自分にとって
都合のいい意見を八木秀次氏は
持ってきたということになります。


戸籍に問題が生じることに言及する人は
法制審議会の中にいたけれど、
選択的夫婦別姓を認めないこととくらべたら
些細な問題という見解かもしれないです。

それを八木秀次氏が都合よく切り取って、
「法制審議会の人が、選択的夫婦別姓を
認めると戸籍に問題が生じる」と、
主張したということです。

00年代のジェンダーフリー・バッシングに
主導的だった八木秀次氏のことです。
どんな恣意的な発言の切り取りをするか
わかったものではないです。

posted by たんぽぽ at 22:37 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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