2020年11月23日

toujyouka016.jpg 自分の選択と他人の選択を区別する設問

11月22日エントリの続き。

早稲田大学の棚村政行教授と「選択的夫婦別姓・
全国陳情アクション」の合同による、
選択的夫婦別姓のアンケートの続きです。

「20〜50代の7割が賛成!47都道府県「選択的夫婦別姓」全国意識調査の概要」
「47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査レポート」(PDF)

 
この調査は3つの設問から成り立っています。
「設問1」が選択的夫婦別姓の是非です。
この設問には選択肢が4つあります。



これらの選択肢は「自分は夫婦別姓と
夫婦同姓のどちらがよいか」と
「他者が夫婦別姓を選択することを
どう考えるか」のふたつの内容をまとめて
ひとつの設問にしています。

これは「自分の選択」と「他人の選択」は
別の問題であると、区別しやすく
するためであると考えられます。

1.と2.と選択肢がふたつあることで、
「自分は夫婦同姓がよい」は、
さらに「他人も夫婦同姓であるべき」と
「他人の名字はどちらでもよい」のふたつの
スタンスがあることがはっきりします。


この手の設問は「あなたは夫婦別姓と
夫婦同姓のどちらがいいか?」
「選択的夫婦別姓を認めるか?」の
ふたつにわけることが多いです。

このように設問を内容に即して
ふたつにわけると、「自分と他人の区別」
ないし「自分の選択と社会制度の区別」が、
わかりにくくなるきらいがあります。
このアンケートではそれを避けた、
ということだと思います。

選択的夫婦別姓制度は、自分の選択とは
無関係に他人の選択を認められるかです。
自分の選択と他人の選択を混同させたら、
アンケートの精度が下がることになります。


ふたつの内容をひとつの設問にして
「自分の選択」と「社会制度のありかた」の
区別をはっきりさせた調査として、
2015年の東京新聞のアンケートがあります。

「東京新聞・別姓のアンケート」

1.「自分は夫婦同姓がいい、選択的夫婦別姓も反対」
2.「自分は夫婦同姓がいい、選択的夫婦別姓は賛成」
3.「自分は夫婦別姓がいい、選択的夫婦別姓も賛成」

今回の選択的夫婦別姓のアンケートも、
5年前の東京新聞の調査の選択肢の設けかたを
意識したのかもしれないです。



ほかに選択肢の文言に関することでは、
1.と2.は「夫婦同姓がよい」ですが、
3.は「夫婦別姓が選べるとよい」で、
「選べると」が入っています。

結婚改姓したくないことが目的で、
相手も同様に結婚改姓したくないので
その結果夫婦別姓になるのであって、
夫婦別姓にすることが目的ではないことを
意識しての表現だと思います。

また現行民法では夫婦別姓を
選択できないので、民法改正によって
選択できるようになるとよいという現状を
意識したものもあるかもしれないです。


夫婦同姓を選びたいかたは、
夫婦同姓になることが目的だと思います。
結婚改姓したいことが目的で
その結果として夫婦同姓になる
ということではないと思います。

そして夫婦同姓は現行民法で選択できます。
よって「選べるとよい」なんて願望で
表現する必要はないでしょう。


3.についてですが「夫婦別姓を
選べるとよい」の選択肢は、他人の選択に
関しては「どちらでもよい」という
ひとつがあるだけです。

これは夫婦別姓を選択したいかたは、
他人さま夫婦の名字に関しては、
どんな選択であっても関知しないかた
ばかりだからということです。

「自分は夫婦別姓を選択するから、
他人も夫婦別姓を強制するべきだ」
などと考えるかたはまずいないので、
はなから選択肢を設けないのでしょう。

posted by たんぽぽ at 14:00 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 自分の選択と他人の選択を区別する設問 web拍手
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]