8月9日エントリの続き。
1990年代の最末期、日本は反ユダヤ主義に
「寛容」だったことを少し触れました。
「小林賢太郎の解任・日本社会の問題」
その後はどうだったかというと、
日本社会ははなはだ残念ながら、
反ユダヤ主義の深刻さを理解しないままきていると、
言わざるをえない状況です。
2010年代になっても、依然として
反ユダヤ主義を問題視しないどころか、
積極的に加担する言動も見られました。
2013年には麻生太郎副首相(当時)による、
「ナチスの手口に学べ」発言がありました。
「ナチスの手口に学べ?」
「ナチスの手口に学べ?(2)」
批判が強まってくると「文脈を恣意的に
切り取られた」などと言って、麻生太郎を
擁護する人たちがたくさん出てきました。
2014年には、東京のあちこちの
図書館にある『アンネの日記』の本が
破られるという事件がありました。
犯人はネトウヨで、『アンネの日記』は
捏造だと思ったことが犯行の動機でした。
明確な反ユダヤ主義が動機です。
「「アンネの日記」事件と蔓延する歴史修正主義 国際世論から警戒される安倍政権」
『アンネの日記』の本の破損事件は
とりわけ悪質な事態になりました。
「アンネの日記は捏造」説が、
またぞろ蒸し返されました。
「『アンネの日記』偽書説への反論」
犯人は在日外国人や韓国政府であるという
デマを流す人も出てきました。
そうしたデマを流す中には、
片山さつきのような国会議員もいました。
「片山さつき議員が「アンネの日記」損壊に韓国政府関与を示唆!?」
2014年には、稲田朋美、高市早苗、西田昌司の3人が、
日本人のネオナチとツーショット写真を
撮っていたことが話題になりました。
撮影は2011年と思われます。
「ネオナチとツーショット」
同年2014年には、高市早苗がヒトラーの
政策を礼賛する本に推薦状を
書いていたことも発覚しています。
推薦状を書いたのは1994年のようです。
「高市早苗ヒトラー本に推薦」
2016年には欅坂46の衣装が
ナチスに似ていることが批判されました。
「ナチスの衣装の擁護者と議論」
「ナチスの衣装の擁護者と議論(2)」
このときは「共産党の小池晃が、
サイモン・ウィーゼンタール・センターに
ご注進した」というデマが流れました。
「SWCにご注進した人がいる?」
日本のマスコミはこうした事件が
取りざたされても問題を感じないのか、
ろくに関心を示さず報道もしないでいました。
最初に批判する記事を載せるのは、
たいてい外国のメディアです。
外国メディアで問題視されて
国内でもツイッターなどで批判が強まると、
ようやく日本のメディアも
「外国でこういう批判がある」という
趣旨の記事を書く程度です。
こうした日本の世論の、アンチ・セミティズムに
対する黙認、容認や支持、加担の延長に
小林賢太郎氏の「ユダヤ人虐殺ごっこ」
うんぬんがあると言えるでしょう。
上述の2010年代の日本のアンチ・セミティズムは
サイモン・ウィーゼンタール・センターが
非難声明を出したものがほとんどです。
それでも日本の世論や社会は
深刻な事態にはならなかったのでした。
2021年の小林賢太郎氏のコントに
かぎっては、たまたま「星回り」が悪くて、
ショーディレクター解任の憂き目にあった、
ということだとも言えます。
反知性主義者は「乱痴気騒ぎ」を
繰り返しても、ゆゆしいことにたいていは
深刻な事態にならずにすぎていきます。
少なくとも日本社会ではそのようです。
それゆえ反知性主義者たちは
自分たちのやっていることに
さしたる問題を感じることなく、
「これでもよいのだ」と自信を持つのでしょう。
それでもたまに批判や抗議の活動が
「クリティカル・ヒット」して、
反知性主義者たちが打撃を受けることも
あるということだと思います。