2021年08月24日

toujyouka016.jpg 派遣社員の生活苦・男性の狭隘な認識

8月23日エントリの続き。

小田急線でフェミサイドに走った通り魔氏は、
派遣社員だったのでした。
メディアの報道をいくつか見ると
「自称派遣社員」と表記されています。

 
通り魔氏はいくつもの職場を、
転々としていたのだろうと想像します。
最後の職場はかなり劣悪な職場環境で
悪名高いところだったと言われています。

「「小田急刺傷事件」容疑者が勤務していたパン工場は“地獄のバイト先”で有名だった」

大学を1年留年後、中退。
そこから徐々に歯車が狂っていったようだ。
職を転々とする中で、昨年6月頃から派遣の職に。
だが、「人間関係が嫌になり、辞めた」(供述)。
彼が最後に勤務していた職場は、
「パン工場の製造ラインです。しかも、あの『○○パン』。
都内の大学に通った経験がある人ならば、
“地獄のバイト先”として記憶にある仕事です」

この通り魔事件は、派遣社員の生活の
不安定さの問題でもあるということです。
これはこれでいちおう理解できます。

派遣の貧困から脱することができず、最後は生活保護。
警視庁は犯行の動機に、社会への強い
恨みがあったとみています」

「これはこれでいちおう」と
奥歯にものの挟まった言いかたをするのは、
派遣の貧困問題はこの通り魔事件と
関係はあっても核心ではないと、
わたしは思うからです。


よくご存知のように派遣社員の割合は
女性のほうが男性より高いです。
「派遣社員ゆえの生活苦や貧困」の問題は
女性のほうが深刻ということです。

通り魔氏が襲った、もしくは襲おうと考えた
女性たちの中にも派遣社員というかたは、
何人もいた可能性があります。
そうした女性たちは、通り魔氏より
苦しい生活をしていることも考えられます。

「幸せそうに見える女性を殺したかった」と
通り魔氏は言っています。
くだんの通り魔氏にとって
「幸せそうに見える」というだけで、
実際はもっと不幸という可能性もあるわけです。


実際には苦しい生活をしているのに、
「お前は幸せそうに見える」と
決めつけられるだけでも、
じゅうぶんな言いがかりと言えます。

そしてそんな言いがかりを一方的に
つけられて、命を狙われるわけです。
それも「ある日あるときとつぜん」で、
どこで襲われるかもわからないです。
どうやって対処したらよいのかと思います。


女性が置かれている現状を理解できず、
「オンナはオトコより楽をしている」と
なんとなく思っている男性は、
残念ながら少なくないです。

かかる男性の狭隘なジェンダー認識は、
このように恐ろしい事態を引き起こす
可能性もあるということにもなります。



付記:

「派遣社員は女性のほうが男性より多い」
ということに関して、このような派遣の
生活苦が原因の殺傷事件を起こす
女性は少ないということも、
考察するところだと思います。

女性のほうが派遣社員が多くて
生活は苦しいのに、なぜ殺傷事件を起こすのは
男性のほうが多いのかということも、
問題にする必要がありそうです。

posted by たんぽぽ at 11:38 | Comment(2) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
私もこの記事を読んで釈然としない感覚がありました。派遣社員の不安定な雇用や劣悪な職場というのはアキバ事件の加藤を思わせますが、アキバが文字通り無差別だったのに小田急はあきらかに「女性」をターゲットにしていますね。
 あと、『○○パン』の生産ラインで働く派遣は女性も沢山いるんですけどね、と、書いた記者に突っ込みたくなりました。
Posted by イカフライ at 2021年08月28日 21:11
イカフライさま、こちらにはおひさしぶりです。
コメントありがとうございます。


「派遣の貧困や生活苦」の問題も
そうですが、男性の苦悩には
「一定の理解」が得られるのに、
女性は男性と同等かそれ以上の苦悩があっても、
おうおうにして無視されますね。

そのような人たちは、発想や視点が男性中心で、
女性はまったくの客体としてしか
見られないのだろうと思います。

かくして女性の問題は「存在しない」ことに
されるのだと思います。


小田急線の通り魔事件は、
「派遣の貧困や生活苦」はたしかに関係あるし、
考察の必要なことだろうとは思います。

それでも本質は「フェミサイド」の問題であり、
ジェンダー問題に軸足を置かないと、
的確な理解はできないと思います。
Posted by たんぽぽ at 2021年08月29日 21:31
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