7月4日の東京都議会選の結果をもとに、
選挙の情勢報道の時点から
実際の投票までのあいだに逆転はありえる
というお話をしました。
「選挙情勢報道は当たるのか? 〜都議選2021を例に〜」
その情勢報道から実際の投票までの
変動ですが、政党ごとにだいぶ差があります。
情勢報道のまま選挙結果となれば、
A判定とB判定の候補者だけが当選します。
A、B判定を合わせた候補者の数は
自民党は50、都民ファーストは16です。
このままなら自民党の「圧勝」です。
実際の当選者は自民党は33、都民ファーストは31です。
この2党の変動が大きいことになります。
都議選2021候補者を情勢報道で5段階判定した結果
都議選2021の情勢報道による判定別当選者数
都民ファーストはC、D判定からの
逆転当選が多くなっています。
情勢報道から判定のランクが
上がった候補者は26、下がったのは5で、
全体的に上昇していることがわかります。
A判定:1候補のうち、1候補が当選(当選率100%)
B判定:15候補のうち、12候補が当選(当選率80%)
C判定:11候補のうち、9候補が当選(当選率82%)
D判定:17候補のうち、9候補が当選(当選率53%)
E判定:3候補のうち、0候補が当選(当選率0%)
A〜D判定だった44候補のうち、情勢報道に比べて
投票結果での順位が上がったのは26候補、
変わらずだったのが13候補、
下がったのは5候補でした。
自民党はA、B判定からの落選が目立ちました。
下位判定からの逆転当選をした
候補者はひとりだけで、ほぼ例外的存在です。
情勢報道から判定のランクが上がった
候補者は5、下がったのは40でした。
後退した候補者がとても多く、
全体的に下降傾向であることがわかります。
A判定:27候補のうち、18候補が当選(当選率67%)
B判定:23候補のうち、14候補が当選(当選率61%)
C判定:3候補のうち、0候補が当選(当選率0%)
D判定:6候補のうち、1候補が当選(当選率17%)
E判定:1候補のうち、0候補が当選(当選率0%)
A〜D判定(無投票を除く)だった58候補のうち、
情勢報道に比べて投票結果での順位が上がったのは5候補、
変わらずだったのが13候補、
下がったのは40候補でした。
これらを見ると、情勢報道から投票に
いたるまでの、都議会選の有権者の判断が
いかなるものだったか予想がつきます。
情勢報道で自民党が圧勝の報道を見て、
「自民党をこんなに勝たせてはならない」と
考えた有権者は多かったのでしょう。
彼らの多くは都民ファーストに
投票したということです。
かくして自民党の情勢報道からの
大幅な後退と、都民ファーストの大幅な
躍進をもたらしたことになります。
これによって、自民と公明を合わせて
過半数という、勝利ラインに
届かなくなったのでした。
彼ら自民党に批判的な有権者たちは、
かなり主体的に目的を達したと言えます。
「東京都議会選・自民公明で過半数に届かず」
自民党を批判したい有権者たちは、
「自民以外でもっとも強いところ」
「自民の対抗となりうるところ」に
投票することが多いと思います。
そうした自民党に対する批判票を吸収する
オルタナティブとして都民ファーストが
選ばれたということになります。
7月5日エントリでお話したことは、
だいたい当たっていたと思います。
「東京都議会選・都民ファーストの結果」
今回の31議席は、都民ファーストは
東京都議会においては、依然として
自民党に対する批判の受け皿になりうる、
受け皿として期待される、
ということになりそうです。
東京都議会では、自民党と都民ファーストの
「二大政党」という状況がまだまだ
続いていることになるでしょう。
7月3日エントリでお話しした
毎日新聞の東京都議会選挙の情勢報道の
集約をみると、都民ファーストの
獲得議席が17となっています。
「東京都議会選・情勢報道の集約」
自民党に不満が強い人たちで、
投票先を決めていない人たちの多くが、
都民ファーストに投票したものと思われます。
立憲民主党と共産党は、今回の都議会選では
健闘したとは思います。
それでも自民党の批判票を集める
じゅうぶんなオルタナティブには
なりえていないと言えるでしょう。