日経新聞に掲載された『月曜日のたわわ』の
全面広告が、国連女性機関(UN Women)から、
問題視され抗議されたお話の続きです。
「国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長」
「「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは?」
日経新聞の『月曜日のたわわ』の
全面広告は、なにが問題なのか、
大きくつぎの3点が指摘されています。
1. 「見たくない人」にも情報を見せた
2. ジェンダー・ステレオタイプの肯定
3. ジェンダー平等を国際社会の中で
推進するという、これまでの
日経新聞の方針に反する。
1つ目は、あらゆる属性の人が読む
最大手の経済新聞に掲載されたことで、
「見たくない人」にも情報が届いたことだ。
2つ目の問題は、広告掲載によって
「異性愛者の男性が未成年の少女を
性的な対象として搾取する」という
「ステレオタイプ」(世間的固定概念)を肯定し、
新聞社が「社会的なお墨付きを与えた」と
見られることにある。
3つ目の問題点は、これまで「メディアと
広告によってジェンダー平等を推進し
有害なステレオタイプを撤廃するための
世界的な取り組み」を国際機関とともに
展開してきた日経新聞が、自ら「ジェンダーの
ステレオタイプを強化する」という
矛盾に陥ってしまったことだ。
ここでは上述の2.をもう少しくわしく
見ていくことにします。
ジェンダー・ステレオタイプの固定化、
という観点は、6月2日エントリでも
わたしは少しお話しました。
高校生の女の子が通勤中の勤め人を
ねぎらうというのが、通常はあまりない
不自然なシチュエーションです。
そしてねぎらうのが性的特徴を
強調した高校生の女の子という時点で、
「読者」「勤め人」は男性しか
想定していないことになります。
この広告は、男性が女性を性的に
消費している、女性は男性に
性的消費されるというジェンダー役割分担を
肯定していると批判されても、
無理もないと思います。
女性は男性をねぎらうためにいる、
というのが、すでに典型的なジェンダー・
ステレオタイプになっています。
そしてねぎらうのが、性的特徴を
強調された高校生の女の子なので、
さらにジェンダー・ステレオタイプが
強化されることになります。
女性は男性から性的に消費される
ためにいるという、ジェンダー役割が
ここに加わることになるからです。
このような性的消費の肯定派、
男性による女性への性加害、性暴力の
肯定にもなりかねないです。
「広告は女子高生のイラストをあえて
用いることで、作品が発信しているメッセージを
確信犯的に、大々的に伝えています。
作品で起きているのは、女子高生への性的な虐待。
男性による未成年の少女への性暴力や性加害
そのものを日経新聞が肯定する構図です」
今回問題の広告はじつは、
「性的魅力を強調された高校生の
女の子からねぎらってほしい」という、
成人男性の願望を反映したものです。
「今回の広告は、男性にとっての
『女子高生にこうしてほしい』という
見方しか反映しておらず、女子高生には
『性的な魅力で男性を応援する』という
人格しか与えられていません。
もとより男性が望んでいるジェンダー
役割分担を担ってくれる女の子が
登場する広告だということです。
国連女性機関は「3つのP」という、
ジェンダー・ステレオタイプからの脱却を
判断する指標をしめしています。
Presence 多様な人々が含まれているか
Perspective 男性と女性の視点を平等に取り上げているか
Personality 人格や主体性がある存在として描かれているか
「性的特徴が強調された女子高生から
ねぎらわれたいという、成人男性の
願望を反映した高校生の女の子」は、
上述の「3つのP」のすべてにおいて
失格なのは、言うまでもないと思います。