8月27日エントリの続き。
カルフーンの「ねずみの楽園」では、
ねずみの数(個体群密度)がどのように
推移したかを、見てみたいと思います。
この図はカルフーンの原論文
"Death Squared: The Explosive Growth and Demise of a Mouse Population"
(死の二乗: ネズミの個体群密度の爆発的増加と消滅)
に載せられた図です。
カフルーンはねずみの数の変化率によって
大きく4つの段階にわけました。
段階A: 1 - 104日
最初に雄16匹、雌16匹の合計32匹のねずみたちが、
ひとつの居住空間に入りました。
その最初のねずみたちが環境に慣れて、
最初に出産するまで104日間かかりました。
段階B: 105 - 315日
55日のペースでねずみの数は2倍になります。
順調にねずみは増えていますが、「勝ち組雄」と
「非もて雄」という階層ができてきます。
315日の時点で、ねずみの数は620匹。
段階C: 316 - 560日
145日のペースでねずみの数は2倍になります。
段階Bのときより増えかたが鈍くなります。
「ナンパ狂」と「レイプ魔」の雄が、
雌にとってストレスとなり、雌自身の死亡率や、
死産率、乳幼児死亡率が高くなったからです。
段階Cの最後のほうになると、
雌の育児放棄も目立つようになります。
雌にかかるストレスゆえに
負担のかかる妊娠、出産、育児が
困難になったからと考えられます。
560日の時点で、ねずみの数は約2200匹。
これがピークでした。
段階D: 561日以降
カルフーンはこの居住空間は、全部で3840匹の
ねずみが暮らせると考えていました。
ところが半分を少しこえた2200匹を
ピークにして、減少することになります。
雌へのストレスは依然として強く、
雌の育児放棄は常態化かつ程度がひどくなり、
乳幼児の死亡率は96%に達します。
最後の死産でない出産は600日目です。
最後の妊娠は920日目でした。
「楽園」の終わりのほうは、
自分の暮らししか関心のない
「ひきこもり」ばかりとなります。
密集状態なんてとっくになくなっていました。
それでも「ひきこもり」たちの身に
染みついた性格は、もはや
変わるはずもないことでした。
彼ら「ひきこもり」たちがふたたび
求愛活動をすることはなかったし、
新しく子ねずみが生まれることも、
まったくありませんでした。
1780日目に、最後の雄がなくなりました。
かくして「楽園」は5年を待たず滅亡しました。
「勝ち組・家持ち」の雄が、自分の家の雌を
守り続けていられれば、まだなんとか
「楽園」は続いたのだろうと思います。
「家持ち」の雌は、「ナンパ狂」や
「レイプ魔」の脅威も少なく、比較的安心して
妊娠、出産、育児ができたからです。
(「ひきこもり」はいくらいても害にならない。)
そのような「家持ち」の雌の子どもたちは
育児放棄されず、ふつうに成長します。
なので「行動の沈下」を起こさず、
次世代の子ねずみを産んでいったと思われます。
ところがねずみの数が増えてくると、
「家持ち」の雄が、自分の家の雌を
守りきれなくなってきたのでした。
それで「家持ち」の雌も、「ナンパ狂」と
「レイプ魔」にさらされてメンタルが崩壊し、
育児放棄をするようになったと思われます。