産経新聞による、小中学生を対象にした、
選択的夫婦別姓についての調査の詳細を
見ていきたいと思います。
「選択的夫婦別姓、「賛成」16%「反対」49% 小中生2000人調査・質問と回答」
はじめに、実際に小中学生が訊かれた
質問を見てみることにします。
問題があると思われる質問のひとつは、
ふたつめの質問です。
2.いまは結婚してからも、結婚するまえの
名字を会社で使ったり、手続きをすれば、
免許証(めんきょしょう)や
パスポートに結婚する前の名字をならべて
書けるようになったり、これまでできなかった
ことができるようになっています。
それでも、あなたは「それぞれ別の
名字のままでも結婚できる」ように
法律を変えたほうがよいと思いますか。
回答者1966人 男子 女子 全体(%)
○変えたほうがよい 32.9 37.4 34.9
○変えないほうがよい 31.6 30.7 30.0
○よくわからない 35.6 31.9 35.1
設問に入る前に「いまはすでに
旧姓の使用や併記ができるから、
結婚改姓の問題は解決している」という
趣旨のことを言っています。
これをご覧のかたは、まったく納得が
いかないのではないかと思います。
旧姓使用に関することで、唯一「成果」と
言えそうなものは、2019年に実現した、
住民票、マイナンバーカードに旧姓併記が
できるようになったことです。
これで旧姓が身分証明に使えるように
なったかというと、そうではないです。
従来通り旧姓の使用は認めないという
職場や金融取り引きがほとんどです。
住民票、マイナンバーカードの旧姓併記が
身分証明として役に立たないことを
総務省がみずから認めているくらいです。
「住民票の旧姓併記・総務省の見解」
産経のアンケートの質問文で例示されている
パスポートも、旧姓併記してあれば
入国審査を問題なく通過できるか
というと、そうではないです。
名前がふたつあるという日本以外に
ほぼない状況に対して、入国審査官は
不審に思うことが多く、トラブルに
発展することも少なくないです。
トラブルを避けたいなら、
戸籍名だけでパスポート登録をしろと、
外務省がみずから認めています。
外務省およびパスポートセンターで「旧姓併記のパスポートでのトラブル件数を外務省では把握していますか?」と聞いたところ
— 井田奈穂|一般社団法人あすには代表理事|ライター (@nana77rey1) October 3, 2024
「旧姓併記は日本独自なのでトラブルは発生しています。ご自分で説明していただくしかありません」「トラブルを避けたい場合は戸籍姓のみで登録を」と案内されています。 https://t.co/DL3NY98uOe
日本経済新聞より。
— 一般社団法人あすには(選択的夫婦別姓・全国陳情アクション) (@chinjo_action) November 27, 2024
『選択的夫婦別姓制度の導入に向け、具体的な議論を始めるときだ。』
『(旧姓使用について)戸籍名が必要な手続きは多くあり、2つの姓を使い分けるのは大きな負担になる。パスポートのICチップに旧姓は記録されないなど、限界がある。』https://t.co/sWx5n3GLYA
ここにあげたほかにも、旧姓使用が
認められない場面などたくさんあることを
しめせるかたもいるでしょう。
現実には旧姓使用なんてできないことが
多いのに、「旧姓使用できるから
問題は解決している」と言わんばかりの
産経新聞のアンケートの設問文は、
「事実に反したことを書いている」と
言ってよいでしょう。
産経の小中学生アンケートですが、質問の仕方がとても悪いと思います。
— 世論分析と選挙情勢予測 (@senkyoyosou) January 1, 2025
「すでに便利で問題は解決しているのに」とでも言いたげな文言は、結果的に回答を誘導しています。
今回の調査に限らず、世論調査結果の記事を見出しだけを見て判断するのは良くないと思います。 pic.twitter.com/YCsxs7AnB8
設問の節の「それでもあなたは」の
「それでも」は「旧姓使用で
じゅうぶんなのに、選択的夫婦別姓が
必要だと、あなたは考えるのか?」という
産経新聞の誘導を感じさせます。
「旧姓使用できるからじゅうぶん」と
いうのは、選択的夫婦別姓の
反対派(非共存派)だけが主張する、
事実を見ない偏った認識です。
そうした反対派(非共存派)の
偏った認識にもとづいて、産経新聞は
調査の設問をしているということです。
反対派(非共存派)は自分たちの
偏った認識が、「偏りのない公正な認識」で、
偏りのない事実と根拠にもとづく認識を
「偏った認識」と信じているのも、あると思います。