『はてしない物語(Die unendliche Geschichte)』
ミヒャエル・エンデの有名な幻想児童文学です。
「はてしない物語」
このお話、名前が重要なモチーフのひとつに
なっているという特徴があります。
(名前の使われかたがふた通りある)
主人公の小学生バスティアンは、
肥満気味で運動音痴のいじめられっ子でした。
読書が好きなバスティアンは、
古本屋で『はてしない物語』という本を見つけます。
興味を持ったがお金がないバスティアンは、
本を古本屋から盗んで読み始めます。
それは「子どもごころの女王」が治める
「幻想郷(ファンタージエン)」という世界のお話でした。
「幻想郷」は不幸にして滅亡し、
その再建には救世主が必要となります。
バスティアンが「子どもごころの女王」に
名前をつけると、本の世界に引き込まれます。
バスティアンは「アウリン」という首飾りを
装備し「幻想郷」の救世主となります。
かくしてイケメン勇者となった
バスティアンは従者アトレーユ、フッフールとともに
「幻想郷」の再建のために旅立ちます。
救世主のあかし「アウリン」は、
願いごとがかなうと持ち主の記憶がひとつなくなる
という危険なアイテムでした。
バスティアンは「幻想郷」で活躍して
名声をあげていきますが、自分が現実世界では
肥満気味で運動音痴だったことも、
はては自分はいずれ現実世界に帰らなければ
ならないことも、忘れていきます。
功名心がはやったバスティアンは、
「幻想郷」の帝王になろうとします。
そうなったら本当にバスティアンは
現実世界に帰れなくなるとさとった
アトレーユとフッフールは反乱軍を組織して妨害します。
帝王になれずアトレーユ、フッフールとも
仲たがいしたバスティアンはひとり旅を続けます。
そして「幻想郷」で帝王になったか、
なろうとした人たちの溜まり場となっている
「もと帝王たちの街」へやってきます。
「もと帝王たち」は「幻想郷」で
記憶をすべてなくして現実世界へ
帰れなくなり廃人と化した人たちです。
バスティアンは驚愕し、残り少ない記憶を
なくさないうちに現実世界へ帰る方法を
模索することになります。
この「なくしたら現実世界に帰れなくなる
最後の記憶」とはなんなのかというと
ほかでもない自分の「名前」です。
「もと帝王たち」は、名前までわすれたことで
廃人と化しますから、名前がないということは、
自分が自分でなくなるとも言えます。
名前が自分のレゾンデートルにかかわる
重要なものとされていることになるでしょう。
そして、ほかのことは忘れても、
最後まで覚えていられるものが
自分の名前であるとも言えます。
名前とは容易に忘れられないものであり、
自分のアイデンティティと密着していることを
しめしているとも言えます。
幻想文学で名前が重要なモチーフとなる場合、
名前が自分自身の存在とわかちがたく
結びつくことが多いように思います。
名前をなくすと自分が自分でなくなるとか、
記憶がなくなる、あるいは名前を変えると
別人になるといったぐあいにです。
名前がその人の本質とむすびついていることを
しめしているのだと思います。



違和感を理解していて、それを幻想文学的に
表現しているのかもしれないです。