2007年12月14日

toujyouka016.jpg 本多勝一研究会(2)

12月4日エントリでご紹介した、「本多勝一研究会」ですが、
「お尋ねにおこたえして」のコーナーでも、
「目糞鼻糞を笑う、本多勝一バッシング」が、取り上げられています。
「外部の組織や団体などの勢力が、本多研を抱き込んで政治的運動に
利用しようという意図で接近してきたことはありますか。」

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/8442/QA.html#seeji-riyoo

なんと、グラムシ会のかたが、本多研を抱き込んで、
政治活動に利用しようとしたことにされているのです。(笑)
あとから書いただけのことはあって、
「印象操作」をするべく、いろいろと考えたもののようです。

 
ところで、この「お尋ねにおこたえして」ですが、
かっこ書きで、こんなことが書かれているのが、目に止まります。
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この方は“社会に害のある”言論は法律で制限すべきだと示唆するなど、
なかなか勇ましい発言をネット上で繰り広げておられる方です。
========

これは、「目くそ鼻くそ」の、つぎのところを指しているのでしょう。
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民主主義を覆すような勢力と闘うための言論抑制の主張、
これは言論の自由を人権などよりも優位に置いている
日本では珍しい意見で、現在ではまだ少数派である。
しかし、欧州などでは常識なのであって、先見的な主張として高く評価できよう。
========
歴史修正主義のデマ宣伝との闘いを
「不当な言論弾圧」などと言うのは許されないのである。
言論の自由は、社会的責任が伴うのであって、無制限なものではない。
========


第一次世界大戦が終わって、共和制となったころのドイツは、
議会制民主主義や、基本的人権の尊重に懐疑を持ち、
理解をしめさないものが、まだまだ大部分でした。
議会政治を全力で守ろうとする政治勢力もなく、
国民の利害の代弁より、ローカルな利益やイデオロギーが優先され、
ひいては議会制度の機能不全さえもたらしました。

公然と議会制民主主義の廃止をさけんでいたのに、
ナチスの危険性は過小評価され、かえって容認さえされました。
それで、ヒトラー・ナチスが勢力を伸ばしても、
各政治勢力は、これを利用することを考えていて、
効果的な対処は、じゅうぶんにはなされませんでした。

『ワイマル共和国』(林健太郎著、中公新書)は、
いちばん最後(207ページ)で、つぎのように結んでいます。
========
しかし目の前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために
最も重要なものが何であるかを認識することを忘れた。
そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用して
その力を伸ばそうとする時には、あらゆる手段をもって
それを闘わねばならぬということを知らなかった。
それがヒトラーを成功させた最大の原因である。
========

こうしたことの強い反省として、第二次世界大戦以降、
ドイツでは、議会制民主主義の維持を、最優先事項としています。
そして、民主制度の破壊をくわだてる勢力が、議会進出できないよう、
その活動や言論を、「ナチス禁止法」をはじめ、
法律できびしく規制もしているのでした。


こんなことは、わかりきったことだと、
じつはわたしは、ずっと思っていたのでした。
ところが、インターネットで、いろいろなかたの意見を
聞いているとそうではなく、むしろめったに見かけないくらいです。
お話が合わなくて、わたしは、とまどいを感じたこともありました。

これをご覧のかたも含めて、多くのネチズンたちは、
ナチスのような、危険な政治勢力でも、発言や活動だけは、
自由にさせるのが好ましいと、考えているのではないかと思います。
たとえ危険な政治勢力であっても、発言や活動を規制すると、
そのほうが非民主的で不健全であり、かえって危険な世の中になると、
思っているかたが、ずっと多いのではないかと思います。

「本多勝一研究会」の人たちは、まちがいなくそのようです。
だから「勇ましい発言をネット上で繰り広げる」などと、
皮肉たっぷりに書いて、グラムシ会のかたは、
危険思想の持ち主と思わせる、伏線にするのでしょう。

「本多勝一研究会」の人たちがどう思おうと、
さきにお話したように、史実はむしろ逆なくらいです。
ヒトラー・ナチスを、なまじ「尊重」したから、
現存制度を悪用されて政権を掌握され、本当に危険な世の中になった、
というのが、実際に近かったのでした。

posted by たんぽぽ at 23:49 | Comment(2) | TrackBack(1) | ウェブサイト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
どうもこの問題になると、たまごどんは分からなくなるピョンな。ナチスもどきの団体、例えば故・赤尾総裁が率いていた大日本愛国党が演説していたとするピョン。たんぽぽピョンはどうすればいいと考えているのら?全員ショッピいて留置所行きなのかにゃ?

ナチス台頭期は、第一次世界大戦の戦勝国がドイツにムチャクチャな賠償金を課して、ドイツ国民は無為無策な政府に大層な不満を持っていたピョン。その当時のミニ政党は、役に立たない議会を辞めろ、ユダヤ資本家に対して何とかしろと言っていたと聞いているピョン。これはナチスとそんなに変わんない主張ではないかとたまごどんは思うんだけんど、そこんとこどうでしょ?そんで、このときのミニ政党員を、どうすればいいと考えているピョンかな?

引用は、2006年4月29日の「言論の自由」におけるgalleryピョンの発言なのら。

>ドイツだけでなく、欧米では10ヶ国くらいが、この「戦う民主制」を採用しております。
ただし、その制限も必要最低限であるのは間違いなかろうと思われます(個別の条文を知ってるわけではないのですが)。例えば、規制は「表現の自由」「結社の自由」などの、それも極一部に限定され、「思想信条・内心の自由」には及ばないとか。だからこそ、ネオナチやら民族主義的極右政党やらの台頭が可能なわけで。

という訳で、たんぽぽピョンの主張するような「ナチスモドキに対する弾圧権」を、政府が持っている訳ではないみたいだピョンよ。
Posted by たまごどん at 2007年12月17日 01:29
こんにちは、レスが遅れがちでごめんなさいね...

うーむ...ここでは、わたしは、事実関係が
どうなっているかの、お話をしたつもりだったのだ...
変な印象操作をしているけれど、「本多勝一研究会」の人たちが、
そのあたりをご存知ないだけで、グラムシ会のかたは、
おかしなことを言っているのではないですからね...

ナチスの政権掌握までは、エントリでお話したことが、
実際の経緯だし、またこうした過去にもとづいて、
現在のヨーロッパ各国の、法律や意識があるのも事実だからね...
これがこの通りだからって、批判されても、どうにもならないと思います。


その法律で、具体的に規制されていることだけど、
歴史の捏造をしたり、ナチスを賛美することを、
出版物に書くと、犯罪になるみたいです。
それから、ネオナチが選挙で当選して、議席を得たけれど、
憲法違反とされて、議席を取り消されたことがあったと聞いています。
(この判断をするのは、政府ではなく憲法裁判所(司法)ですが。)

わたしも、条文を見たことないし、
そんなにくわしくもないので、ちがってるかもしれないけれど、
これらが、galleryさまのおっしゃる、「表現の自由」と
「結社の自由」の一部の規制だと思います。
これについて、わたしの意見を言えば、妥当だと思いますが。
Posted by たんぽぽ at 2007年12月17日 22:18

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