すこし前ですが、5月19日に東京大学で、治部れんげ氏による
男性のワークライフバランス(WLB)についての講演がありました。
そのくわしい報告を、kobeniさまがお書きなので、
これを参照しながら、わたしの考えをお話したいと思います。
東大での講演なので、もともと男子学生や、男性研究者向けの
講演なのですが、一般の場合にも当てはまる内容も多いと思います。
「男性のワーク・ライフ・バランス〜「フェアな人ほど大変」なのはなぜか〜」
「イクメンを目指す男子向けの講演@東大に行ってきたよ
〜治部れんげさん「男性のワークライフバランス」〜」
(はてなブックマーク)
これは男性のほうが、私生活とお仕事のバランスを取る、
という、ワークライフバランス(WLB)の実現が、
女性よりむずかしくなっている、というお話です。
はじめに「配偶者の勤務先は従業員のWLBに
配慮しているか?」という調査のことが触れられています。
そして「夫から見た妻の職場」よりも、
「妻から見た夫の職場」のほうが「配慮していない」と
感じる割合が高いという結果が出ていて、
すでに実感していることがわかります。
理由のひとつは、女性のほうが職場における負担が
すくないことが多いからで、とくに専業主婦だと
家事や育児の時間が取りやすいですから、
外で働いている男性は、時間が取りにくく、
配偶者と「フェア」に分担するのが、むずかしくなってきます。
もうひとつは、家庭のことに時間と労力を振り分ければ、
おのずとお仕事を削ることがあります。
また共同作業者がいると、その仕事にも影響が出るので、
周囲からもいやがられることもあるというわけです。
すこし古い調査ですが、男性の育児休暇の取得率が
コンマ以下になっていて、休暇を取りたがらないのは
キャリアに影響することへの懸念、というものがありました。
なんとも保身的だと、最初にこれを見たとき、
わたしは思ったのですが、ここには周囲の人たちの
無理解や圧力もあるのだろうと思います。
つい先日も、知事が育児休暇を取るのを公言したら、
「知事だけは休まず働け」という批判が、
つぎつぎと出て来たのでした。
こんなのも、男性の育児休暇に対する、
風当たりの強さが現れているのだろうと思います。
男性のWLBの立ち後れについて、エントリでは
つぎの考察をしていますが、わたしも同様の印象を持っています。
http://d.hatena.ne.jp/kobeni_08/20110523/1306161751
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現役のワーキングマザーが「ママになっても働く」ということを
「意識的に選び取っている」のに対し、
「パパになったら家事育児をする」ということを、
意識的に選び取っている男性は、まだ少ないように思うのです。
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女性は、生活の必要などから、結婚・出産しても
働き続けることを望み、その権利を得るべく
まがりなりにも努力を続けてきた、
それゆえ現在では「ワーキングマザー」が、
一定の市民権を得られたのだと思います。
ところが、男性は育児・家事に参加する必要に
ほとんど迫られず、興味も持たなかったと思います。
それで自分も育児に参加する権利を得ようとせず、
WLBの実現が、むずかしいままになっていると思います。
すこしあとにつぎのようにありますが、そうだと思います。
女性がお仕事と家庭の両立を勝ち取ったのとおなじく、
男性もみずから主張して、勝ち取っていく必要がありそうです。
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こういった現状をふまえて、「いばらの道で、
周囲からの圧力も大きいけれど、男性社会を変えうるのは、やはり男性。
自分の意志でイクメンの道を切り開いてほしい」という
メッセージが込められているのでは。と感じた次第でございましたよ
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従来は男性の育児参加というと、妻への「協力」でしたし、
それでもじゅうぶん「家庭に理解がある」とされたのでした。
「イクメン」ということばが現れて、
妻の補佐ではなく、積極的に育児をやる男性が
注目されるようになったのは、つい最近のことです。
これからなのかもしれないです。
付記:
講演は男性研究者向けなので、これに触れておくと、
研究者は趣味を楽しむようにお仕事をしているかたも多いです。
それゆえ家のことのために、お仕事の時間を
削りたくない人も、すくなくないだろうと思います。
また、「ブラック研究室」でなくても、
いつ結果が出るかわからないお仕事もたくさんあります。
正規の勤務時間をすぎて働いているなんて「ざら」で、
「仕事人間」の度合いが、一般の場合よりずっと高いわけです。



http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1727151591&owner_id=1806035(mixiやっていない方はリンク読めなくてすみません)
研究者の世界というのは全く縁が無いので一般論になってしまいますが、「男は仕事、女は家庭」というスタイルが長く続いたので、一人前の仕事をするには家庭のことをする時間やエネルギーなど無いという業務形態がどこの職場も出来てしまっているのでしょうね。
とはいいつつ、かつて家庭を持ちながら仕事をまっとうした女性達はその中で頑張って両立させてきたんですよね。
そこには「一人前に仕事をして経済的にも社会的にも自立し、男性と対等に扱われ評価されたい」という強い意志と熱意があったのだと思います。
男性の育児参加というと、どうしてもまだ「妻が仕事を続けるため」とか「女性の社会参加のため」的な視点で語られてしまうのですが、かつての女性達が仕事をする権利を得る為に奮闘したようにこれからの男性達は「育児をする権利」を主張して欲しいですね、女のためじゃなく自分の為に。
なんだかんだいって男社会なんだから、女性が仕事の権利を得るより、やってみれば容易いかも知れないですよ(^_^)v
このエントリにコメント、どうもありがとうです。
>http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1727151591&owner_id=1806035
じつは、わたし、このエントリを書きながら、
ご紹介のミクシー日記も意識していましたよ。
男性の育児参加の、女性の補助から主体的なものへ変化、って、
問題意識が重なっていると思ったです。
研究者の世界については、ここでは「仕事人間」が多く、
WLBに無関心な人の割合が、一般社会より程度が高い
典型化されたサンプル、ということでじゅうぶんと思います。
>「一人前に仕事をして経済的にも社会的にも自立し、
>男性と対等に扱われ評価されたい」という
>強い意志と熱意があったのだと思います
>これからの男性達は「育児をする権利」を
>主張して欲しいですね、女のためじゃなく自分の為に
まったくおっしゃるとおりです、わたしも同感ですよ。
権利を得るためには、強い動機が必要だし、
それにはニーズに迫られるとか、ステータスになる、
といったことが必要なんだろうと思います。
そう考えると、男性の育児参加は、
ニーズもステータスもすくなかったと思います。
「イクメン」ということばが出て来たので、
まがりなりにも状況が変わっているんだろうなとは思いますが。
>女性が仕事の権利を得るより、やってみれば容易いかも知れないですよ
そうそう、「いばらの道」なんて言われているし、
「イクメンの道はけわしい」なんて引いちゃう
男の人もいるのかもしれないけれどね...
女性のあゆんだ道よりは、まだまだたやすいんじゃないかって、
わたしも思ったりしてます、はい。
(こんなとき、「WLBが実現できている女性のほうが、
優遇されてる」とか、「男性が差別されている」とか言う人も、
いるのかもしれないけど、男性がする必要のなかった膨大な努力を、
女性がしてきた結果なんですよね。)